革命的cinema同盟

名作お断りのB級からZ級のゴミ映画サークル 文学フリマ・ツイッターで活動中

エド・ウッド番外編―研究メモ

Twitterでのつぶやきをまとめただけデェス…

プラン9・フロム・アウタースペースの真ん中の女性・ジョアンナ・リーはテレビの脚本家に転職。エミー&ゴールデングローブW受賞の「Babe」の脚本を描き、The Waltonsでエミー賞受賞した、最も偉大なテレビ脚本家の一人なのは、日本人の殆どが知らないし、映画秘宝も書いてくれなかった。

 

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真ん中がジョアンナ・リー

映画秘宝エドウッド」は我が国数少ないウッド研究資料なんだけど、ウッド映画には大根役者って『殆どいなくて』、映画俳優組合初期メンバーでテレビ黎明期に大活躍したライル・タルボットや1910年代から西部劇俳優として活躍したバド・オズボーンとか凄まじいメンツが滅茶苦茶いたことの記載がない。

ウッド映画は初見ではただの基本的人権を侵害する社会のガンなんだけど、調べるとアメリカ映画史の分水嶺、つまり短編から長編、劇場からテレビへの過渡期に位置し、また出演者も活躍の媒体が各々異なり、実は1950年代の映像業界を考察する貴重な映像資料であることへの認知が全くない。

これはウッドの日本での認知の経緯が「死霊の盆踊り」から始まり、バートンの「エド・ウッド」での紹介で、「映画が死ぬまで映画が好きだったゴミ野郎」という認識が広がり過ぎてしまって、彼を映画・テレビ史の発展の中に組み込んでみる視点が全く育っていないというのがある。

バートン「エド・ウッド」は1990年以降の映画文化の中にあのカスを蘇生させた点で意義があるけど、「グレンとグレンダ」を「女装を彼女に認めてもらいたい」『だけ』の映画という認識を広げてしまった点では罪深いんだよね。最後まで観ると「女装を克服して男として生きていく」復活の物語なんだよね。
バートンの伝記映画の最たる罪はグレンとグレンダの終わらせ方を、セーターを渡す場面にした点。本来はあの後に治療パートがありグレンは女装癖を「克服する」。バートン版は女装癖を受け入れて欲しい願望なのに対し、本家は女装癖があるけどそんな自分が恋人に受け入れられ、共に克服する物語。

さらにプラン9フロムアウタースペースは、伊東美和氏が述べるようにゾンビ映画にSFの視点を盛り込んだ点において、重要な一作である。伊藤チコ的に宇宙からの電波で死体が蘇るという着想はナイト・オブ・ザ・リビングデッドに受け継がれてると考えられ、つまりウッドがロメロを生んだ解釈も成り立つ。

だからウッドというのは、米国の恥部・映画の敵・映像文化のガン・健康で文化的な最低限度の生活を脅かす悪魔・再生に必要な電気の無駄にする地球の敵・シナプスを破壊する殺人映画など罵詈雑言を豊富に生み出す泉ではあるのだけど、映画史的に貴重な対象であることはもっと知られていいはず。


ウッド映画が地球に打撃を与え、人類の寿命を短くしているのは言わずもがな。前述の様に再生に必要な電力を無駄にして発電所に無価値な負担を与えているし、それに伴う発電は無意味なもので、無意義にオゾン層に打撃を与えている。伊藤たちに紫外線が降り注ぐのはウッドのせいだ。

バートンの「エドウッド」で描かれたウッドの人物造形は、なるほど、誰もが彼を好きになる魅力にあふれているんだけど、しかしどす黒い血の涙を流して一歩考察すると、相当な修正主義が入っている況やウッドの前半生だけで彼を「死ぬまで映画を愛した」と評価を下すのはフィクションである。

しかし、バートンのエドウッドというのはあくまで「事実をもとにしたフィクション」であり、伊藤が言いたいのは伊藤たち視聴者がそれを理解しないままあれを見て、「これが事実」だと思い込んでしまうという点に、問題の本質があり、それは有史以来の人類が抱える問題でもある。


ウッドの後半戦はみじめだと言われる。しかし、ルドルフ・グレイ『エド・ウッド 史上最低の映画監督』これは関係者のインタビュー記事なんだけど、プラン9以降、ウッドは情熱が無くなったようで、ポルノ小説・映画、そして企業CMの仕事に取り組むようになる。一般的にこれは落ち目と言われる。

でもだ!しかしだ!記述を読み込んでいくと、ウッドにはギャランティーは分からないけど相当な仕事が来ていたと読めるんだよね。特にポルノ小説については出版社の社長はとても彼を評価していたし、筆も早くて多作作家。夫婦そろって飲んだくれでなければ、貧困に陥る経済状況ではなかったと思われる。


柳下毅一郎『興行師たちの映画史』だったと思うけど、ウッドは決して『無能』な映画人ではなかったと伊藤も思う。出なければあのカスのimdbのページはプラン9で劇終だった。むしろ低予算映画・サブカルチャーといった、ある意味陰ひなたの文化世界ではウッドは有能な人材であったとの解釈ができる。有能かつ「貴重な」人材だっただね。でなければ仕事は来ないと考えらる。それがどんな賃金だったとしても。


通知が20+になっているけど、バートンの表現が悪いとか映画秘宝の紹介の仕方が良くないとかそんな『激烈にどうでもいい』ことを糾弾したいわけじゃない。ウッドを映画史の中で読み解くことの意義の定昇ともう一つ「クソ映画を作るのは製作者ではなくて『情報』」ということを言いたい。

 

エド・ウッド=文化の敵」の命題が形成された過程を追いかけると日本国内では「映画秘宝」「死霊の盆踊り」のプロモーション・紹介、世界的には「バートン」を経由して1980年代の映画雑誌「ゴールデン・ターキー」に行きつく。本書においてウッドとプラン9は「駆逐すべき映画・映画人」に認定される


「ゴールデン・ターキー」は重政氏「映画の本の本」で批判される通り、20歳と30歳の兄弟がおもしろおかしくカス映画をディスってランキングした本。今主席の手元に原本があって…怠けてて翻訳してないのが悲しいよ、ムック本なんだよね。ぶっちゃけ紹介されている映画が『少ない』。その中で選ばれた。

思うに著作兄弟は、70年代中ごろから埋め草として深夜テレビで流されたゴミ映画を観て、にやついていた、伊藤のような愛好家の一人で、ノリと勢いで執筆された本だと思うけど根拠はない。しかし、重政がキレているように「非常に少ない映画の中」からウッドは「レジェンド・オブ・ゴミ」に『選ばれた』ことは無視できない指摘で、でも『史上最低の映画』というパワーワードが独立独歩し、半世紀経ってもその座に鎮座しているのは、映画史的に意義があり、「視聴者が何をもってその映画を判断する」のかを考えるに極めて重要な事象だと思うよ。

2021年5月文学フリマ出店見合わせのお知らせとお詫び

bunfree.net

2021年5月16日に第32回文学フリマ東京が開催されます。

当革命的cinema同盟はコロナがもう少し落ち着くまで出店を見合わせます(新刊も)。

 

2年目に入りました。自粛疲れのみならず様々な経済活動へ支障があると思います。

終わりのない道程は不安と苦痛の石ころが沢山ありますが、なんとか乗り切れるように努めるほかないでしょう。

 

また、申し訳ございません。昨年11月の文学フリマ欠席の件、カタログとTwitterのみの告知でこちらへの掲載が出来ておりませんでした。

今回の告知も合わせて、もう少し早くできるようにします。

ゾンビ映画番外ー伊藤チコの研究メモ

伊藤は一年半前の同人誌『進撃のヘンテコゾンビ48』においてwikiを参考にマタンゴが勝手にゾンビシリーズ14として最新作を記しました。その後の調査の結果、5倍の数量があることが判明しました。ここに訂正申し上げます。

 

パチモンゾンビ映画を調べていたら革命的なことが分かったので、メモとして記します。

まず、wikiに記してあったパチモンゾンビとは、

『Zombie(film series)』https://en.wikipedia.org/wiki/Zombie_(film_series)
閲覧日:2019年10月20日

Zombie…『サンゲリア
※ロメロの『ゾンビ』は原題『Dawn of the Dead
Zombie3…『サンゲリア2
ここからビデオ、テレビ放送時のタイトル。
Zombie4:After Death…『ゾンビ4』
Zombie5:Killing Birds…『キリングバード』
Zombie6:モンスターハンター…ジョー・ダマト監督『Absurd(不条理)』(1980)※日本未公開
Zombie7…ドイツ映画『Zombie 90:Extreme Pestilence』(1991)※日本未公開
Zombie8…スペインゾンビ映画『エル・ゾンビ IV 呪われた死霊海岸』(1975)(原題:TERROR BEACH)
※『エル・ゾンビ』シリーズ4作目。
Zombie9…香港映画『カンフー・ゾンビ』(原題:烏龍天師招積鬼)※トルクメニスタンでテレビ放送された時のタイトル。
Zombi10…ジョー・ダマト『ビヨンド・ザ・ダークネス/嗜肉の愛』(1978)(原題:BEYOND THE DARKNESS)
Zombi11…ブルース・リーのパチモン、ブルース・リの香港映画『龍門秘指』(1976)※日本未公開。
Zombi12…香港映画『液体人間オイルマン』(1976)(原題:油鬼子)※ウズベキスタン公開タイトル
続く
Zombi13…ブルース・リ出演『中国超人インフラマン』(1975)(原題:中國超人)
アゼルバイジャンのテレビ公開時。
Zombi14…日本映画『マタンゴ』(1963)

ちなみに、
『ナイトメア・シティ』がゾンビ3
『恐怖の溶解人間』(七六)がゾンビ4
北朝鮮製の怪獣映画『大怪獣プルガサリ』(八五)がパキスタンではゾンビ34

というのがある。しかし、調査能力をアップさせた伊藤は、下記の調査結果をもたらした。

ゾンビ16はミラクルカンフーアシュラがルクセンブルク

Zombi 18として怪獣大戦争がカナダとタジキスタン

Zombi 24として1936年の見世物映画がカメルーン

リヒテンシュタインにはZombi 25に香港映画。

Zombi 27はかなり濃くて、トルコ映画なんだけど悪のニンジャ軍団をチェストする映画がトンガで海賊版されたやつ。Zombi 29は香港映画がトルコ。

欠番もすさまじいですが最新作はゾンビ:70の1982年魔界天使のトルクメニスタンでのタイトルというのが分かりました。

最新年度で言いますとイカレスラーの海賊版ラトビアでゾンビ39。

 

これ面白いんですよ。どうせタイトルつけなんて「ゾンビ人気だろうから」って99%いい加減な理由なんですが、70-90年代の中央アジアで無責任シリーズが多く展開されているのって何か理由があると思うんですよ。世界史・文化史・民族・宗教の側面から考察すると、ゾンビが繋いだ文化圏っていうのが見えてくる気がするんです。

 

わかったことがたくさんある。

1.勝手にゾンビシリーズは、80年代前後の中近東に集中していること
2.香港映画・日本映画が非常に多かったこと。
この二点を踏まえると、ダイナミックな考察が出来ます。それはゾンビが結んだアジアと中近東の世界です。

 

1.この時期の中近東はソ連の衰退、イランでの革命、中東戦争など、周辺諸国の政情が不安定でした。それでも映画を公開する経済的余裕とインフラがあったわけです。
2.この時期の香港はカンフー、キョンシー映画が非常に盛んな黄金期でした。香港映画の人気がここまで及んでいたことが分かります。

もう一つの考察が文化です。私たちのイメージする動く死体とは全く異なるモンスターが、向こうではゾンビとして名前を付ける、何かしらのイメージがあったと思います。思うに、中近東の国では「人間型のモンスターであればゾンビ」として通用できたのだと思います。この視点は革命的です。

中近東、トンガとかあるけど、のパチモンゾンビシリーズは、ゾンビに新しい視点を与えると思います。私たちが一般的に認知するゾンビというのはロメロ以降の『アメリカ視点』のゾンビです。たどればアフリカが発祥ですが。死んで、腐りかけた人が動き、人肉を食べる。

ポピュラーではなくなりましたが、『中国視点』のゾンビがキョンシーです。これは定義がいい加減ですが、幽霊と死体の中間で動く妖怪という感じかな?
一般的にはアメリカ・ゾンビがイメージしやすいでしょう。しかし、中近東のゾンビは、人間の形をしたモンスター、もしくはミラクルカンフーのようなうまく言えないけど、障碍者というか、まあ、一般的な五体満足でない、異形というか、こういう表現は良くないんだけど、も『ゾンビ』としてとらえている。これって今までのゾンビにはなかった視点です。

つまりアメリカのゾンビが席巻し、アジアでキョンシーがうごめきだした時期に、まったく今までのゾンビ映画の中では取り上げられなかった「もう一つのゾンビ」が中近東にいたということです。

これは革命的な発見。

あんまりびっくりしたから記録に残したくて書いてしまった。

伊藤はゾンビ映画はそろそろ『進化』するタイミングに来ていると思っている。人に操られるだけの死体が、動き出し血をすすり、ノロノロから走りだして、しゃべりだす。ではそこから先は?

もしかしたらこの地域にあるかもしれない。

今後の伊藤自身の研究の為に記録する。

パルプフィクション文庫とB級小説ワゴンセール企画のご説明

パルプフィクション文庫

かつて映画館にはこういう形態がありました。

それはやっすい料金で、汚い劇場で、低俗で野郎臭い映画を流し続ける「グラインドハウス」と呼ばれる劇場のことです。

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映画グラインドハウスポスター

 ロバート・ロドリゲスクエンティン・タランティーノの上記作品で名前を知っている人は多いでしょう。しかし、実際にそれを見たことのある人は、少ないかな?伊藤は見たことないよ。

 これらの興行形態では、のちに特定のジャンル映画の古典となる作品が多く上映されました。代表的なのは『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』や『子連れ狼』などでしょうか。通常、アクションだったりヴァイオレンスだったりホラーだったりエッチィ映画だったり、まあ、昼間の映画館では流せないような類の作品を多く流しておりました。60年代から70年代にかけて隆盛を誇ったと言われます。日本では…そうですね、二番館とか三番館とかがカテゴライズされるのかな?違うかもしれない。

 まあ、ええわ。

 さて、私たち革命的cinema同盟は長らくゴミ映画評論・情報誌を社会の皆々様に散布してまいりましたが、こういう興行形態を知るにあたって、似たようなのをやったら面白いかもなと思う様になりました。

 しかしながら小説の世界でも、かつて似たようなものがありました。「パルプ・マガジン(厳密には違うけどパルプフィクション)」です。ものは見たことがありません。元々アメリカで1950年代にまで流行った雑誌群でやっすい表紙にやっすい内容の小説を掲載していたものになります。のちにアメリカ文学の一線を担う作家たちが活動初期に投稿していたこともあって、文学史の中ではたぶん重要な位置に立っていると思います。この辺は専門家に聞こう(例を挙げればアイザック・アシモフレイモンド・チャンドラーオー・ヘンリーなど。参考文献Wikipedia!)

「ふーん、えっちじゃん。先行でやってるんだからマネしてもいいよね」

 ちなみに文学フリマ東京において、かねてから主席のデルモンテ岡村が「この売り方いいなあ」というサークルさんもいました。ブログや通販サイトがないので言葉だけの説明になりますが、ふたり日和様というところで「戦闘アリス」を毎回刊行されているのですが、『完全読み切り短編』の『シリーズ』で『一冊あたり50-60ページ』前後(だったよね)、価格もワンコインでお釣りがでる設定(ものによります)。

 どういうシリーズかというと、タフできれいでカッコイイィィィィィアリスがイケメン化した不思議の国の仲間たちと共に様々な童話の中で起こったトラブルを解決していく冒険シリーズなのです。題材と内容と分量がちょうどよくて、読み切りなのもちょうどよくて、何から何までちょうどよくて。

 いいよね、すごく。主席を通じて買占めさせているんですけどいいよね、すごく。

「毎回分厚いのばっかり書いているから、こういう薄くて安価で完全読み切りで個性があるものを手掛けたいな……」と思う様になりました。

 グラインドハウス云々よりもこっちの方が思いは強いかな、伊藤的に。

 ただし、伊藤たちのイデオロギーは反名作主義ゴミ映画独裁低俗マンセーなので、戦闘アリスシリーズのような万人に愛されるものではなく、もっとコソコソ隠れて読むものが私たちの綱領なのです。つまり

ヴァイオレンス!大爆発!

エッチィ!リディクラス、ばかばかしい!

 これ以外不要です。いえ、これらを描くというのも相当難しいのですが、伊藤たちは永遠に心を換気するそよ風よりも、コンマ一秒でも鼻でフンと笑われる突風が欲しいのです。そして長らくドタバタコメディ書いていたので、路線変更したかったのもあります。目指すはムカデ人間2越え。

 そのため基本R18になります。しかしながら小説におけるR18というのは漫画と異なり線引きが微妙なところもあります。例えば、

 

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絶倫溺愛 白銀の王女と黒狼王子

 ティアラ文庫はTL小説をたくさん刊行していますが、18禁は表紙にありません。挿絵もエッチイのに。他ライトノベル的官能小説でもそうです。商業小説がそうなのだから伊藤たちもR18表示はしなくてもいいのではと思いますが、あえてつけます。

 理由としては上記のレーベルは、こういっていいのかわからないけど、「暗黙の了解」「表紙とタイトルでわかる」「購入は自己責任」という文化というかそういう歴史やイメージがあるのに対して、革命的cinema同盟にはそういう文化や歴史はありません。イメージがあるかもしれないけど。

 そして予定なのですが、児童書も紛れ込ませて散布しよう考えています。つまり児童書と、イケメンたちのどエスな放課後を一緒のブースに並べる際には、やはり目に見えてわかる表示が必要だと考えました。

 もっとも、これが一番厄介ですが、R18表示は伊藤たちの独自に判断して決めております。だから人によっては「これがR18?」というのも将来的にはあるかもしれません。その辺は厳しめに(もっとも身内の中での厳しめってあてにならないんだけど)つけてます。とにかく三歳児に「んあ♡…ひゃぁん♡熱い、すごく熱い♡んんっ!」とか「オジンポ!ギンモジィィィィ!イグゥゥゥゥゥゥゥゥ!」とかそういう場面見せないための予防措置です。

 すまんな、名前を不用意に用いるとすぐに怒るネズミの帝国はいくら敵に回してもいいんだけど、人民の炎上や糾弾は避けたいんだ。

 そしてR18をつけることで伊藤たちは様々な表現ができるとも思うのです。伊藤は復讐ものや拷問ものがお気に入りです。悪い奴らをザ◎サツするかわいいヒロインとか最高です。ツムラはエチエチが好きなので、好きなだけアッハンウッフンバッカンが出来ます。

 もっとも買いにくさは今まで以上なので、そこのとの折り合いが今後どうなるかはありますが、2020年11月時点では以上の考えです。

 

B級小説ワゴンセール企画

 ホームセンターやTSUTAYAなどでレンタル堕ち(落ちか)が三本1000円とかで売りに出ているのを見かけた方も多いと思います。中古に抵抗がない方ならば、意外な掘り出し物に狂喜乱舞して店員に怒られた人も多いと思います。

 今回の企画は、それです。

 原則パルプフィクション文庫は一冊300円で散布します。

 本当はワゴンを使いたいんですが、邪魔なのでやすっぽい段ボールとか番重を使います(段ボールいいね、革命的で。主席の古文書みたいな手書きのやる気のない売り場を一生懸命作って……事前に何も知らない人がみたらげんなりするだろうな。。。)

 そして2冊で500円にします。

 フラッと迷い込んで、妙なタイトルを一冊手に取ってもう一個買えば割引するよと怪しい岡村おじさんに唆される皆様の姿が想像しにくいけどできます。

 もっといえば選ぶ楽しさというのが売り場にもっとあったらいいなというか、ホラ、経験ありませんか?3本1000円で、2本は即決だけどもう一本どうしようかなと迷うあれ。全部いらないんだけど、マシなものを選ぶ、あの奇妙な緊張感。本当は3冊500円にしたかったんだけど、原価的に合わなくてね。すまんな。

あ、ちなみに、

①Boothからの購入(データ購入含む)は対象外になります。

②イベントをまたいでの購入は割引の対象になりません。例えば、3月の同人誌即売会で1冊購入し、5月の同人誌即売会で「3月に買ったから値引いてくっちょ」というのは行っておりません。同時に2冊を買うことが値引きの条件になります。

 

ワゴンセール企画対象商品一覧

原則冊子に再販はしません。Boothでは半永久的に散布し続ける予定です。

1.評判が良かったらシリーズ化するかもしれません。

2.評判がそうでもなかったら遠慮なく打ち切ります。

3.重複購入は注意してくださいね。

 

① ショート・ショート集『天使のいる地獄』(試し読み付き)パルプフィクション文庫 - 革命的cinema同盟

com

② R18短編小説『片腕アラサー 対 血みどろスケバン協騒曲』パルプフィクション文庫 - 革命的cinema同盟

R18短編小説『片腕アラサー 対 血みどろスケバン狂騒曲』パルプフィクション文庫

『片腕アラサー 対

 血みどろスケバン狂騒曲』

(短編・パルプフィクション文庫)

※1試し読みは下をスクロールして下さい。

※2試し読みは全ての半分だけを掲載しております。

 

お久しぶりです。伊藤です。

やっと新刊の告知が出来ます。

今回はなんと二、三年ぶりの創作ですパロディはありません)。

映画評論ではないのでご注意ください。

本作ともう一作のショート・ショート集『天使のいる地獄』を2020年11月22日の第31回文学フリマ東京にて散布致します。

あん、コロナだから今回もパス!という方はご安心。

今回はデータ販売にてBoothで散布するので、逃げられないよ。ええな?

なお今回はパルプフィクション文庫という実験企画を立ち上げました。

詳細はこちらから。

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R18短編「片腕アラサーVS血みどろスケバン狂騒曲」

 

文学フリマ販売価格:300円(Booth価格:300円※データ販売)

B級映画ワゴンセール企画本につき二冊で500円☆

 

ページ数:52p

発行者:革命的cinema同盟

編集:デルモンテ岡村

執筆:オー・ハリー・ツムラ

表紙:伊藤チコ

表紙の影絵:SILHOUETTE DESIGN、(@TopeconHeroes)      

kage-design.com

印刷・製本:ちょ古製本工房

ブース販売ページ:下記リンクからどうぞ(2021.1.9遅くなり申し訳ないです)

booth.pm

※1試し読みは下をスクロールして下さい。

※2試し読みは全ての半分だけを掲載しております。但し性描写はカットしています。

※3参考資料・元ネタは一番最後にあります。 

 

☆あらすじ☆

初恋よ、永久に眠れ!

掻き立てる三十路のエクスタシー

夕陽血潮で染まった時、最後に立っているのはどっちだ!

風紀の乱れは心の乱れ!

崩壊した教育現場を粛正するべく、政府は殺しの許可証を持つ狂育者を育成した!

そして悪徳校長とスケバン率いる不良軍団が覇権を争う工業高校に、

隻腕の狂育者五木エリカが派遣された!

しかし、

うっかりスケバンがプラトニック・ラブしている青年を寝取ってしまった

大変だ!

スケバンは香港仕込みの暗殺術を身に着けた世界最高の殺し屋だ

純愛が粉砕されたスケバンは三千人の武装ヤンキーと

T34戦車そしてアハト・アハトを率いて県警本部に八つ当たり!

彼に相応しい女はどっちだ!

荒れ狂うスケバンの真空飛び膝蹴りに

五木エリカの隻腕が唸った!

「必殺!片腕七つ道具一京ボルト電磁砲!」

今世紀最大の純愛、

ここに死す! 

 

【試し読み】(25870文字(R18描写割愛後は22733文字)/51741文字)

 

 D県立射手前工業高校は高い塀に囲まれていた。

 刑務所を思わせる厚く無機質なコンクリの壁に沿って、真黒なスーツに身を包んだ、アラサー教師五木エリカは歩いていた。
 銀髪のセミロングで身長が高かった。狸のように丸い目は愛らしく、胸と腰は性的な膨らみを持っていた。気になるのは、右手である。片方だけに黒い手袋がはめられていた。日差しの強い五月には暑苦しく感じられた。
 壁一面に描かれた下品で性的な言葉とピカソを真似た絵画に沿って正門に向かうと、鉄の正門に男性の死体がぶら下がっていた。スーツは焦げて、メガネは割れていた。整った髪からは血が滴り、蝿が嬉しそうに飛んでいる。門を開けると、死体が落ちてきた。腐って首がちぎれたのだ。ちぎれた部分から蝿の子供たちが零れ落ちた。
 校庭を横断する。校庭の隅に目をやると、こんもりとした山が峰を成している。一つの山を野良犬が掘り起こしていた。しばらく眺めていると、犬は墓から腕を一本引きちぎり、エリカの前を横切っていった。
「ようこそ!こちらにいらして!」
 昇降口で校長が機嫌よく出迎えてくれた。ブヨブヨに太り、パンパンなピンクのスーツを着て、ヨチヨチ歩く、アツアツの化粧の彼女に導かれ、校長室に入った。

 校長はソファーに飛び乗って、葉巻に火をつけ煙を吐く。一本勧められて、エリカも火をつけた。
「よく来てくれたわ!あなたが来るのに三年かかるって言われた時は自殺を考えたけど、待った甲斐があったわ!忙しいのね?人気があって羨ましいわ!」
「まだまだ、教育現場は荒れていますからね」
 低い、凛とした声でエリカは答えた。

 小中高におけるヤンキーと教師の犯罪は増加の一途を辿った。そして、不正を隠蔽する体質もまた、脈々と受け継がれた。教員は激務薄給の上、
「学校での生活しか知らない世間知らず」
 と、社会から誹謗中傷を受けた上に、先輩教員とヤンキーからの暴力で精神を病むか、命を落とした。若い教員は離職するか自殺するかで、教員の数は激減した。人手不足を解消すべく、非正規雇用や外国人留学生を雇ったが、待遇が後進国の労働者以下なので人は集まらなかった。

 そのうち教職は最底辺の職種となり、ホームレスになるか教員になるか、秤にかけられるまでに落ちた。ロクな人間が集まらなかった。文字が書ければ教員になれた。
 結果、国内の教育レベルは低下した。程度の低い教師からは程度の低い人間しか育たない。真面目な生徒は死に絶え、生き残ったのは社会に害しか与えない汚物だけだ。
 世界上位の経済力を誇った日本なんて遠い昔の話。現在はアジア最貧国。国内産業は絶滅し、経済破綻を政府は宣言した。
 法治国家における神聖なる不可侵領域、そして全ての元凶である教育の場は、不正のもみ消し、教育委員会の隠蔽は当たり前。そしてヤンキーは未成年者の保護を強化させた新少年法により守られていた。
 爆増する少年犯罪に政府が出した答えは、一八歳以下の未成年者の犯罪に対する罪は、最大一年の少年院収容という条文だった。施行前年まで未成年の犯罪で年二百人の死刑判決、三千人の懲役刑が出されていた。そんな状況でも世論は、
少子化ゆえに子供は大事にしなければならない。それがどんな罪であっても、実刑を与え、本人の社会復帰に害を与えたらどう責任を取るのか?数少ない子供を大切にしよう。そのためには罪を犯しても更生に期待するべきだ。例え殺人を犯しても、更生に期待しよう」
 性善説を極端に過信した思慮のない民意により、目先の利益しか考えない政府は選挙で勝ちたいがために、この新少年法憲法の修正項目に記入した。史上初の憲法改正だった。
 十八歳までなら人を殺しても死刑にならない!ヤンキーたちは暴れだした。徒党を組み、商業施設や銀行を襲い、些細なことで人を殺した。
各地で新少年法反対の暴動が起こった。しかし、それでも未成年者の更生を信じる層が根強く、憲法改正には至らなかった。
 こうした法治国家の崩壊に、心ある若手官僚は危機意識を持った。彼らはそもそもの根源が、学校教育の崩壊にあると考えた。
彼らは国内最後の無法地帯に司法のメスを入れようとし、文×科×省のタカ派官僚が中心となって、司法・教育の枠組みを打破すべく、新教育令を作った。そして国会で十年に及ぶ根回しの末、強行採決した。
 その法律では一定の能力を満たした教師に殺しの特許状を与える内容だった。特許状を得た彼らは、腐ったリンゴを殺害することが認められた狂育者となった。
 この特許状のために、文×科×省は強烈な試験と訓練を施した。初年度は受験者十万人の内合格者二名、九万人の死亡者、九千人は精神を損なった過酷な試験だった。合格者がいない年もあり、施行二十年で特許状を持つ教師は、全国で五十人しかいなかった。その一人が五木エリカだ。
「あなたは歴代最高の狂育者と聞いているわ」
「ただのフリーランスですよ」
 殆どの狂育者は特定の学校に所属せず派遣教員として各地の学校に出向いていた。その方が―。
「金になるわよね。私もだいぶ稼いだわ。おかげで生徒に足を持っていかれたけど。以来普通の先生よ」
 校長はスカートをめくった。金属製の義足が見えた。
 校長も狂育者だった。しかし校内政治で私腹を肥やす方がずっと得意だった。アルファベットも書けなかった英語教師は、サイコパスな思考と政治力、そして容赦ない残酷さと暴力でD県屈指の権力者になった。
 エリカは葉巻の火を消し、
「普通の先生がこの学校にいるとは思えませんけどね」
 D県立射手前工業は世界で三番目に荒れていた。一番目は南アフリカの小学校で課外授業に銀行強盗と警察署を襲撃している。二番目はメキシコの高校で三千坪の大麻畑と覚醒剤製造工場を持っている。
 射手前工業は国内最大の実習設備がウリだった。ヤンキーたちに武器弾薬を作らせ、紛争地域に密輸していた。製鉄技術もあり、戦車も作ることができた。
 大手兵器メーカーの製品を入手し、分解して図面を作る。精密な機械は困難を極めたので量産はできなかった。しかしアナログな時代遅れの武器の方が、顧客の要求に答えることができた。大量に作れて現地で修理がしやすいからだ。部品も販売し、利益率は高かった。
 校長が始めたビジネスだった。特許状は終身だったので、好きなだけ抵抗する教師や警官を殺害できた。十五年に渡り、東アジア最大の武器製造工場の利権を独占できた。
彼女は国中からヤンキーを集めた。この学校に通う三千人の生徒のうち、九割が少年院卒だった。生きる価値もない生き物に、技術と学歴を与える聖職者として、校長は著名人だった。
「フフッ!普通のおばちゃん先生よ!たった二人の生徒に頭を抱えているんだもの。たった二人ね・・・・・・」
 校長は二枚の写真と数枚の紙をエリカに渡した。
 一枚目には、仲村カウという女子生徒の顔が写っていた。鼻が高くて肩口まで伸ばした髪に、切れ長の目がはかなげな大和撫子だった。ここまで和服が似合いそうな日本人はいないだろうと、エリカは思った。
「特にこの女は・・・・・・」
 と、校長は二枚目の写真を指差した。西洋風人形の顔立ちに、海の色をした瞳の少女が写っていた。真っ赤なヘアバンドをつけた金色の長い髪は美しく、深窓の令嬢と言うべき女だった。
 二枚並べると西洋と東洋の伝統的な人形を並べているようだった。
 彼女の名は丹羽スミレ。昭和臭い名前と、校長は苦々しく呻いた。数枚の紙には詳細な記録があった。
               ☆
 丹羽スミレは六歳で孤児になった。彼女の最も古い記憶は、後部座席から始まる。
 彼女はD県のプロレタリア階層の出身だった。両親は日本人だったが、母親はロシア人を祖先に持っていた。隔世遺伝で金髪の青い瞳の少女が生まれるのも、おかしい話ではなかった。
 両親は正義感溢れる性格で、悪徳警官ロリコンデブの岡村巡査の児童買春を糾弾した。地元紙が騒ぎ、県警は岡村を一ヶ月の減給処分にした。岡村はこれを恨み、スミレの家を深夜、襲撃した。両親はスミレを連れて逃げ出した。闇の中、娘の腕を掴む母の手は、力が入っていて痛かった。
 父は乱暴に車を運転した。銃声がする。後部座席で母はスミレに被さり、飛び散るガラスの破片から守ってくれた。強い衝撃。車が電柱にぶつかって止まった。
「畜生、二人とも逃げろ。母さん、スミレを頼む。ここで足止めする!」
「待ってよ!」
 スレミは叫んだが、包丁を持って父は車を飛び出した。母も、
「お父さん!ごめんなさい、スミレは車の中にいて。お父さんを連れて帰ってくるから、絶対に」
「待ってよ!」
 スレミは叫んだが、母は車を飛び出した。
 八歳の子供が大人しくできるはずがない。車を降りようとしたが、一人でドアを開けられなかった。このチャイルドロックが最後の父母の愛だったと、後にスミレは思った。
「ホッ!よくも俺を減給にしたな!」
 パトカーで追いかけてきた岡村は、スミレの目の前で両親を射殺した。割れたドアの窓から、両親の血が降り注いだ。
 岡村は両親の死体を何度も蹴り飛ばし、放尿と脱糞で侮辱した。そしてスミレに気が付くと、
「ホッ!貴様の両親はどうしようもないウンコだ。汚らしい遺伝子を持ったお前も、射殺してやりたい!でも、新少年法のせいでお前を殺したらクビになってしまう!新少年法は子供を殺すのも禁止しているんだ!」
 代わりに彼女を車から引きずり出し、ビンタして唾を吐きかけた。顔が半分ない両親の無残な遺体を見せつけ、そしてスミレの顔を、母の顔があった場所にグリグリ押し付けた。スミレは泣き叫んだ。
「お母さん、お母さん」
 岡村は殴って蹴って彼女を虐待した。警官は彼一人だった。やがて市民の通報でパトカーが来た。仲間に目撃されたらまずいと、岡村は逃げ出した。スミレは血まみれになって泣くしかなかった。保護されたスミレは岡村の暴行を訴えたが、目撃者がいないので無視された。
 その後スミレは父の友達で、香港人のジミーの養子になった。彼は東アジア指折りの殺し屋だった。親分肌の彼は、彼女を一流の殺し屋に育て上げた。
 十二歳で彼女は東アジアの頂点に君臨した。狙撃も暗殺術も武術も身に付けた最高の殺し屋だった。それだけでなく、一流の教育も身に付けていた。勉強も好きだった彼女は香港社会で、表向きは優等生として受け入れられた。
 しかしある日ジミーは、
「俺は殺し屋を引退しようと思うんだ」
「どうしてですか」
 スミレは尋ねた。ジミーは答えた。
「俺はお前の親父と親友だった。親友の娘に危険な仕事を教え込んだことを最近後悔しているんだ。だから、これからは普通に生きていこうと思うんだ……お前に人殺しをさせてしまって!俺が殺しでしか食えないせいで!」
 ジミーは大粒の涙をこぼして謝罪した。スミレは彼のそばに駆け寄り、
「おじ様。私は感謝しております。両親の死から、私は泣くことも笑うこともできなくなっていました。おじ様は、確かに殺し以外のことはできないかもしれません。それでも、私に生きる術を与えてくれました。教育も、衣食住も下さいました。私はおじ様に少しでもお役に立ちたかったのです。だから、人殺しも苦痛ではありませんでした。むしろ幸せです」
「そんなことを言ってはならない。こういうことをしている人間はロクな死に方をしない。
今更だが許して欲しい。お前には殺戮の世界から抜け出して欲しい。誰かの命を狙うことなく、誰かに狙われることもなく、落ち着いた生活をして欲しい。
俺は長年、人を殺して生きてきた。その生き方を変えるのは勇気がいる。しかし、お前に強いる以上、俺も努力しなければならない。スミレ、約束してくれ!俺と一緒に普通の生活をするんだ。約束だ!」
「はい。約束します」
 二人はスミレの故郷のD県に移住し、スミレは地元中学に通い始めた。
 そこでは嬉しいことがあった。幼馴染のジョーという少年に再会できたのだ。スミレはジョーが大好きだった。香港に行ってからもずっと大好きだった。
 この時期のスミレは幸せだった。殺戮の世界から陽のあたる、愛とか純潔とかを、まだ夢見る余裕のある世界に住むことができて、スミレは幸せだった。
 しかし移住して一ヶ月後に、ジミーは殺された。スミレが十三歳の時だった。中学校から帰ってきたら、ジミーはミンチになってゴミ袋に詰め込まれていた。
 ゴマすりと裏金で警察署長に昇進していた岡村がジミーの素性を知って金欲しさに、ジミーを憎んでいた裏社会の人間に売ったのだ。スミレは激烈な憎しみに支配された。
岡村は児童買春が生きがいだった。記憶力に問題がある男だったので、ラブホテルに来た彼女のことは忘れていた。
「ホッ!これは大当たりだ!さあ、おじさんのポヨンポヨンなお腹に乗ってごらん!体脂肪率四十%だよ!」
 スミレは岡村の腹の上にまたがって行為をすると見せかけて、彼の目に指を突っ込み、脳をかき回した……あの感触は忘れられない。たくさんのミミズの中に手を突っ込んだような、ヌルヌルとした細長い物体が、手の甲を、そして手のひらを撫で回す、気持ちの悪い感触。
「ホッ!ホホッツ!!ホッ!!!」
 岡村は体を伸ばして痙攣した。鼻から脳みそが噴出し、スミレの顔に飛び散った。残った目に、
「私を見て下さい。見覚えはありませんか。あの時のウンコです」
 恐怖と痛みで岡村は絶叫した。スミレがグイグイと手首まで眼窩にのめりこんでいくと、動かなくなった。
 いつも以上に感情的な殺しだった。叫びを聞いて駆けつけた従業員に抑えられ、スミレは少年院に入った。
 復讐を終えた彼女は気力が失われていた。脱出しようと思えば簡単にできたがやる気がなかった。ぼんやりと一年を過ごす中で、彼女は忠実な部下にして最愛の親友である仲村カウと出会った。

                  ☆
 仲村もまた凶暴な性格だった。彼女は連続撲殺魔だった。彼女は生涯で百十一人を殴り殺していた。
 初めての殺人は自らの祖父だった。十一歳の時に同居を始めた高齢者の祖父は、暴言と暴力を母に振るった。
「なぜ長男を産まない!娘一人では家が絶えるだろう!」
 ストレスで母は娘に八つ当たりした。父親は、SNSに夢中で何もしなかった。
祖父が死ねば前の生活に戻れる、と考えた娘は、祖父を置き時計で殴り殺した。それを叱責した父も、バットで殴り殺した。母は感謝した。二人で死体を細かくし、燃えるゴミに出した。
 しかし、父と祖父の相続財産を巡り母子は対立した。
「そもそもあんたが女に産まれたのが悪い!男に産まれていたら、誰も死ななかった!なんで女に産まれた?」
 娘は母を撲殺した。馬乗りになって、何度も拳で母の顔を潰した。指の骨が折れるまで母親を殴った。
 でも、彼女は母を愛していた。自殺未遂を起こしたが死にきれず、警察に自首した。一年間少年院に入ったが、彼女の殺人ロードは本当の意味でそこから始まった。母の死で彼女の人格は壊れ、撲殺の虜になっていた。
「殴る時の振動が、手のひらから足の先まで電気のように流れ、その痺れが強く『生きている』を感じるんだ。あの時、お母さんは生きていたんだって思い出すんだ」
 母親は拳の中に生きていた。どうして人はショックを追憶するのだろう。『母』を感じるため、生活費を稼ぐため、通り魔を繰り返した。男も女も子供も老人も関係なく被害者になった。
 警察は七回任意聴取をしていたが、毎回彼女の担当をしていた警官の伊藤は、女の子が撲殺はしない、と思っていたので逮捕されなかった。仲村が逮捕され二度目の少年院に入ったのは、伊藤を殴り殺した時だった。
 彼女の拳は何十人も殴ってきたことにより、鋼鉄の硬さに変質した。車のボディを貫通させるのも簡単だった。
 それでも、東アジア最強の殺し屋の少女と同じ房に入ると知った時は、年貢の納め時を感じた。しかし実際会ってみると、想像以上に弱々しい美少女だった。
 仲村はスミレの身の上話を聞き、自らの身の上を重ねた。祖父、父……大好きな母を苦しめて、穏やかな生活を破壊した彼らに対し、仲村は自らの手でけじめをつけた。その後、母を撲殺した時の記憶は手のひらに残っている。区切りがつかない世界に生きている仲村は、スミレにはそうなって欲しくないと思った。スミレをいい子だと思っていた。彼女の根は腐っていないと思ったのだ。
「まだ復讐は終わってないんじゃないの?養父を殺したヤツを殺さないと・・・・・・」
「その気力はもうありません」
 スミレはぐったりしていた。養父を失ったと同時に、少年院に入ったことで、今後の社会生活の足枷になると考えていたのだ。新少年法で治安が乱れた社会であっても、マトモな職業に就くには、真面目に生きていた方がいいに決まっていた。
 そして警官殺しで前歴が洗われ、殺し屋だったことが露見した。警察職員の一人が、うっかりSNSに投稿してしまい、話題になっていた。もう養父の願った普通の生活は送れない。
 普通の生活とはなんだろう。スミレは両親が生きていた時の生活を思い出した。貧しかったけど、髪の毛の色で、瞳の色でいじめられたけど、両親がいて、かばってくれる友達もいて、ほのかに好きになった男の子もいた。そういう生活なんだろうな……でも、自分の素性が全て明るみになった今、そういう生活は送れない。
 仲村は無気力なスミレにヤキモキするのと同時に、スミレが好きになった。彼女の願う普通の生活に自分も身を置きたくなった。でも、けじめはつけなくてはならない。新しく生きるのならば。
「復讐を果たしてから、普通の生活を送れば良いんじゃない?」
 スミレはきょとんとした。
「どういう意味ですか?」
「だって義理のお父さんを殺したヤツ、まだ生きてるんでしょ?ダメじゃん、最後まで復讐はしないと。けじめがつかない」
「・・・・・・ですが、養父との約束をこれ以上破るわけには」
 スミレはうなだれた。ゴチャゴチャした話は嫌いな仲村は頭をゴリゴリ掻いて、
「マトモになるのは後でいいんだよ。大体、今の日本でマトモなヤツなんていないんだから。マトモって何って言われたらめんどくさいけど、私自身のことも言えないけど、略奪や殺人、行政機関の不正に慣れてしまう社会で、理性を保つなんて不可能だよ。だからその約束守るなんて、そもそも不可能なんだよ。日本では。だから金を貯めて、海外に移住して、名前も何もかも全部変えてやり直す時まで、我慢しなよ。
でも復讐は果たさないとね。自分の人生を損なったヤツをそのままにしちゃダメなんだよ。新しく生きるなら、余計に」
 スミレは仲村を見つめた。この屁理屈にも似た楽観さに興味をもった。仲村は言った。
「何とかなるって」
「何とかなるものなんですか」
「大丈夫じゃないの?私も一緒だし」
 スミレは救われた。
 二人は一緒に卒院した時、半年かけて復讐を果たした。その過程でD県の県議も殺した。養父の仇は県議の部下だったのだ。
 再び少年院に収容されたが、職員の津村が二人の下着を盗んで転売しようとした時、彼女たちは彼を惨殺した。それをきっかけに少年院から解放された。少年院は彼女たちに怯えていた。
 卒院後、二人は別々の生活に戻ったが交流は続いた。
 学校に戻ったスミレは、その凶暴な行いが全て露見していたので、友達から見捨てられ一人ぼっちだった。特に大好きなジョーも彼女を無視するようになり、心が重かった。
 最悪なことに殺した県議は土建会社の社長だったのだが、ジョーの母親の勤務先でもあった。ジョーの母親は失職し、再び職にありつけず病に倒れた。ジョーは生活保護で学校に通っていた。スミレはジョーに顔向けできなかった。だから仲村の存在は救いだった。
 仲村もスミレといると、『母』への追憶を忘れることができた。彼女はその理由を考えた。
「似た者に出会えて、寂しくなくなったんだと思う」
 仲村は中学を出たら進学せずに、金を貯めて海外に行こうとしていた。
スミレは高校への進学を望んだ。高校を出ていた方が海外に行く資金を貯めやすいと考えたのだ。だが、凶暴な前科のせいで、受け入れてくれる学校はなかった。定時制も単位制も断られた。
 仲村はスミレを可愛そうに思った。そして彼女は少年院卒でも入学できる射手前工業を紹介した。
「ヤンキーの巣窟か・・・・・・暴力に彩られた日々はイヤ」
 スミレは渋った。しかし仲村は熱心に勧めた。
 スミレは賢かった。だから高卒の資格を取って、もっと上の学校に行けると仲村は信じていた。高卒認定試験というものが昔あったが、そんな制度とっくに廃止されていた。経済破綻した日本では教育は不要不急の産物となっていた。だから、上の学校に行けば収入の高い仕事に就けたし、海外に行く時も、不便ではないと考えた。DQNの帝国への入学を嫌がるスミレに仲村は、
「大丈夫だよ、私も一緒に行くから」
「仲村さんが行くなら、行く」
 こうして二人は射手前工業に入学した。
                  ☆
 エリカは紙を校長に返した。校長は二本目の葉巻に火をつけた。校長は発情した顔で、
「入学すると知った時、濡れたわ!彼女たちと仲良くなれば、県のあらゆる産業や公的機関を手に収めることができるって興奮したの!
 実はね、私は県知事になりたいの!でも対抗勢力が強くてね!彼女たちと仲良くなって、そいつらに牽制することができれば、県知事になれるわ!そしたらもっとたくさんお金が入るのよ!新しい税制を作って、公共工事はうんと高い金額で受注して、お礼を貰う!工業団地に覚醒剤の工場を作って世界中に売るの!商売敵が来たら、彼女たち消してもらうのよ!
 でも、説得に失敗したの。三年前、私の駒だった生徒会の連中を使ったんだけど……ヤンキーって嫌ね。一年生にお願いするのが嫌で、生徒会で殴りかかったの」
               ☆
 入学式直後、スミレと仲村を三十人ばかりの武装ヤンキーが取り囲んだ。コカインが香水の代わりになっている、全身刺青の顔黒ギャルの生徒会長は、
「ヒャッハー!あんたら、百人以上殺しているヤンキーなんでしょ、ウチラの仲間になれよ、校長からの命令なんだよ。拒否権はないのさ!」
「すいませんね。ウチラ、堅気になりたいんです。校長先生のお話はお断りします」
 仲村は腰を低くして頭を下げた。しかし顔黒は、
「ヒャッハー!一年がナマを抜かしてんじゃねえ!」
 とナイフで切りつけ、仲村は腕を切りつけられた。
「痛い!」
「何をするんですか」
 スミレは怒鳴ったが、一年に反抗されてプライドが傷ついた生徒会長は、
「ヒャッハー!仲間にならないなら、殺せ、犯せ!」
 三十人のヤンキーは二人に飛びかかった。それが彼らの運命を決定付けた。
 スミレは怒った。仲村の傷は浅かったが、跡が残ったらどうしてくれるのだ。
 頭の中でサイレンが鳴った。殺せ、殺せ!
 スミレはファイティングポーズを取った。拳を顔の前で柔らかく握り、左足に体重を乗せて、右足を折り曲げてフラミンゴのポーズになった。そして、
「ミャハー!」
 と、金属バットで殴りかかったヤンキーの手首に、右足のつま先を送り込んだ。残像すら見えない速度で送り込まれた蹴りは、ヤンキーの手首を消滅させた。
「ミャアアアア!」
 ヤンキーは大量の血を手首から噴出させ、出血多量で死んだ。次々に飛びかかってくるヤンキーを、スミレは右足でミンチにしていった。顔黒はたじろいで逃げようとしたが、
「ちょ、あんた、逃げんなよ」
 仲村がいつの間にか背後に回っていた。強靭な握力を持つ仲村は、顔黒の下腹部を握りつぶすように掴んだ。皮膚にツメが食い込み、肉が裂けていく。
「あああああ!!!」
 痛みで絶叫する顔黒。仲村は顔黒の子宮と腸を引きつりだし、持ち主の目の前で引き裂いた。
「スミレ、トドメはあげる」
「はい」
 スミレは右足を天高く掲げた。百八十度に開かれた大きな股が勢いよく閉じられると、顔黒の脳天にスミレのかかとが入った。必殺のかかと落としである。
「ギャァアアア!」
 顔黒は叫んだ。頭蓋骨が割れ、脳が潰れ、体が真っ二つに裂かれていく感覚を最後に、絶命した。
                 ☆
「生徒会はこうして全滅。北陸地方を代表する生徒会だったのに、十分で生ゴミになったわ。二人は生徒会を私の差し金だと思ったの。私は彼女たちに危害を加えろなんて言っていないのに!
 でも、彼女たちは私に襲い掛かり、年寄りの足を奪ったの。おっほっほっ!恥ずかしいわ!この年で土下座して、理由を話して命乞いだなんて!二人は言ったわ。
『スミレさ、この学校では大量の銃火器製造を行っているじゃん?その利権、ウチラで貰おうよ。そうすれば高校卒業したら、すぐに海外に行けるよ。スミレも海外の大学に進学できるじゃん!』
『ですが・・・・・・』
『迷っている場合じゃないよ。海外の物価は高いんだ。校長、死にたくなかったら、ウチラを生徒会に任命して、工場の利権全部寄こしな』
 心底ムカついたわ!でも命が惜しいわ!取引先に、工場の幹部生徒に彼女たちの指示に従うように伝えたの!おかげで私はただの先生、何の権限もないの!
でも、不思議!ムカツいたけど、ますます仲良くなりたくなったの!優秀な子は大好き!何としても仲良くなりたい!手を組めれば、私は県知事になってたくさんのお金が入る。彼女たちは県知事の私の権力を使える。
 彼女たちは裏社会ではやっていけると思うわ。でも表の世界ではまた別の顔が必要よ。私にはまだ表の顔はあるわ!操り人形になるかもしれないけど、お金が手に入るなら十分よ!今は一円も手に入らないんだもの!でも、彼女たちは私の話を聞いてくれないのよね!丹羽スミレは言ったわ!
『校長先生と手を組んで、県政を牛耳る提案には乗れません。私たちは卒業したら海外に行くのです』
 行かせるものですか!彼女たちの力があれば、県知事、いいえ、北陸三県を支配下に置くこともできるのよ!
 だからあなたにお願いする内容は一つ。彼女たち私の同盟を結ぶ懸け橋になって!」
「それでも彼女たちが応じなかったら?」
「フフッ!彼女たちは強い!だから、強いヤツを見分ける能力にも長けている!あなたを見たらこう思うはずだわ。やられるかもしれないって!臆病とは違うのよね。死線を歩いている者だけがわかる、ただのカン・・・・・・あなたと衝突したくないはずだわ。
 私もケチだったの!分け前は半分半分で交渉していたわ。でも、九対一でいいわ!試算したの。工場の利益が年間五十億。でもこの県で絞れる利益は五千億。私の分け前として五百億も入るんだから、贅沢は言えないわ!」
「もし仲良くなれなかったらどうしますか?」
「その時は殺していいわ。実は、私が県知事になるのを後押ししてくれている人物がいるの。その人からの突き上げが最近ひどくてね。いつまでも待たせられないの。だからあなたが最後の希望なの。あなたが彼女たちと私の同盟を成立させれば、最高なのよ。彼女たちはまだ利用価値があるのよ!」

 

 階段を上がって三階を目指した。そして三年B組に向かった。エリカは数学兼B組の担任になった。元の担任は校門でぶら下がっていた男だった。
「あら・・・・・・B組はどこかしら」
 教室の案内板は全て壊されていた。どの教室がB組だか分からない。時刻は三時間目だった。この時間は一学期の中間試験なのに、廊下には生徒が何人かいた。
 座り込んでいる男子生徒を足で押すと転がった。腕に注射痕がいくつもある。手には注射器があった。やりすぎで死んだのだ。廊下の端では男同士、(R18のためカット)
 女の悲鳴が聞こえた。男子トイレで乱雑な音がする。覗き込むと、白衣を着た女性教師が男子生徒三人に(R18のためカット)。忙しそうなので、立ち去る。すると、男子生徒が一人追いかけてきた。
「女の匂いがすると思ったらやっぱりいた!あの女には飽きていたから、お前を犯す!」
 チャイムが鳴った。それを合図に男子生徒は勃起した(R18のためカット)をむき出しにして飛びかかった。エリカはサッと避けると、男子生徒は勢いあまって床に転がった。
 避けながらエリカは、右手の黒い手袋を取った。立ち上がった男子生徒は、
「な、なんだ!その手は!」
 右手は冷たい鋼鉄の輝きを放っていた。義手だった。しかし、しなやかに動く高精度なものだった。
「あなたのような生徒のせいで失ったの。でも気に入っているんだ」
 エリカは右腕を男子生徒に向かってまっすぐ伸ばした。すると、機械の右手が腕の中に収納され、銃の口のような穴ができた。
「片腕七つ道具……瞬発ハリケーン!」
 エリカが叫ぶとブワッ!と、突風が手首から巻き起こった。秒速十キロの風は男子生徒を飛ばすのは十分すぎた。
 彼は紙のように宙を舞い、壁に叩きつけられた。頭は粉々に崩れ、脳みそが壁を汚した。目玉の一つが床に転がる。
 それを上履きが躊躇なく踏み潰した。
「なんの騒ぎでしょうか」
 清雅な声だった。今まで聞いてきた中で一番美しい声だと、エリカは思った。声の主は青い瞳で見つめ、
「あなたが新しい担任の先生でしょうか。お初に目にかかります。三年B組の丹羽スミレです」
「五木エリカよ。あなたが校門で腐っている担任を殺したの?」
 と、尋ねるとスミレは瞬きもせず、
「はい。あの先生は理科の先生に乱暴しました。死ぬ寸前まで追い詰められていましたので、私が救いました」
「多分、その先生は肉便器になっているわ」
 エリカはトイレを指差す。ちょうどすっきりした顔の男子生徒二人が出てきた。青い顔になったスミレは入れ違いに中に入ると、悲鳴を上げた。
「そんな!ああ、先生!目を開けて下さい!まだお嬢様が小さいのに!一歳にもなっていないお嬢様を一人にしてしまうのですか!旦那様が亡くなって、お家には誰もいなくなってしまうのですよ!お嬢様を一人にしてはいけません!先生!」
 男子生徒二人は釘で打たれたように固まっていた。スミレの悲鳴を聞きつけて、ざわざわと生徒が現われた。一様に怯えた顔で、男子生徒たちを遠くから見つめている。
 スミレがトイレから出てきた。無表情は変わらなかった。男子生徒に向けた瞳も、海の色のままだった。
 男子生徒の一人、リーゼントはもう一人の共犯者であるスキンヘッドを指差した。
「俺じゃねえ!俺は止めたのだ!うぐ!」
 いつの間にか間合いを詰めたスミレは、リーゼントの首に向かって人差し指を突き立てた。その指は彼の喉仏を潰し、首の裏まで突き抜けた。
 リーゼントが声にならない悲鳴を上げると、空気の漏れる音と一緒に血が噴出した。
崩れ落ちる彼にスミレはまたがり、襟詰めの制服を剥いだ。胸にツメを突き立てると、瞬く間に皮膚が切り開かれ、内臓がむき出しになった。そしてもくもくと腸を引き出した。
 血の噴水の中、彼女は瞬きもしなかった。雪よりも白い肌は紅色に、月の光よりも金色の髪は朱色に。彼女の全てが赤に染まった。解体が終わるとスキンヘッドに、
「一時間くらいで彼は死にます。このようにしておけば、何があっても、彼は助かりません」
 まだ心臓も肺も動いていた。瞬きすらリーゼントはしていた。まだ彼は生きていた。
「そいつが言ったのは嘘だ!」
 スキンヘッドは喚いたが、スミレは無視して、
「パンツを下ろして下さい」
 スキンヘッドは拒絶したが、スミレは同じことしか言わなかった。諦めた彼は、泣きながらズボンとパンツを下ろした。濃い陰毛の中に生えたしなびた(R18のためカット)
「湿っていますね・・・・・・先ほどまで(R18のためカット)に湿っていますね」
「ち、違う。俺じゃない」
 彼はベソをかきつつ、しかし(R18のためカット)は固く伸びた。スミレはエリカに、
「彼は何をしていたか、教えて頂けますか」
「彼は口の中に入れていたわ」
「ありがとうございます。こういう風でしたか?」
 スミレは(R18のためカット)。エリカは、
「もっと激しくしていたわ」
 (R18のためカット)を押し込み、引き抜き、また押し込むのを繰りかえした。やがて、
「オェ!」
 スキンヘッドは自らの口内に射精した。射精の衝撃で、股間の出血がひどくなった。吐き出さないようにスミレは彼の顎を押さえた。喉がごくごく動き、彼女が手を離すと吐いた。足元に赤い白濁液が広がった。
「汚したら掃除をしなくてはなりません」
 スミレは彼の頭を掴み、床に叩きつけた。足で頭を踏み、ゲロの中でモップ扱いする。彼は虫の息で股間を押さえていた。出血が尿を漏らしたように広がっていく。荒い息遣いで涙を流す彼に、スミレはつま先からの蹴りを入れた。血の中に歯と目が転がった。
「彼も一時間ほどでしょう。そこのあなたとあなた。申し訳ございませんが、一時間後に彼らを外に投げておいて下さい。先生は埋葬して下さい」
「外に投げておくだけでいいの?」
 エリカが尋ねると、スミレは顔を向けた。血と精子の飛び散った顔に表情はなかった。
「こちらに来られる前に、犬を見かけませんでしたか?彼らが食べてくれるのです。お墓に入っていいのは、善き人だけです」
「クリスチャンなのね」
「いえ、臨済宗です。ところで、先生からは血の匂いがしますね・・・・・肌に染み込んだ、たくさんの血の匂いがします。狂育者なのですね」
 周囲がざわついた。新少年法から解き放たれ、未成年を自由に殺すことができる特権階級を、ヤンキーたちは恐れていた。
 しかしスミレは動じない。さすが東アジアの頂点に君臨した女子高生だとエリカは感心して、
「あなたのクラスに案内してくれる?」
「わかりました」
 スミレの案内で、エリカは教室に辿り着いた。挨拶を簡単にすませ、答案用紙を配った。この時間は試験の最終時限だった。
 射手前工業の偏差値は一桁だったので、テスト問題は偏差値二桁の学校とは異なる内容だった。答案は解答用紙とセットで、英国数三科目が紙一枚にまとめて配られた。
 テストが早く終わる人間には二種類存在する。頭が良くて考える必要もなく答案を書き上げるインテリと、答案を埋める意志もないボケである。この学校には後者しかいない。そのため一つの時限で三つの科目を解かせていたのだ。
 答案を見ると、偏差値一桁には十分な問題だった

 期末テスト問題(英国数)
〇英語
①名前をアルファベットで書きなさい。九十点
②ヘンリー・ダーカーの『非現実の横行』を全て日本語に訳しなさい。十点(掲載省略)
〇国語
①あなたの名前を漢字で書きなさい。九十点
聖徳太子蘇我馬子編纂の『国記』を全て現代語に訳しなさい。十点(掲載省略)
〇数学
①あなたの名前を書きなさい。九十点
ゴールドバッハの予想を証明しなさい。十点

 二十分もすると生徒たちは暇そうになった。通常ならば騒いでいるに違いない。しかし彼らはエリカの顔色を伺い、机の端を筆記具でトントン叩いて、文字を埋めているように見せかけている。なお、スミレは居眠りをしている。見てみると、答案は全て埋まっていた。他の生徒は名前だけ埋めていた。
 例外がいた。頭を捻って、答案を埋めている男子生徒が一人いた。低く唸る声が、エリカの何かを呼び起こした。
 いい男だった。端正でキツイ眼差しに高い鼻と広い肩幅、そしていい匂い―エリカは唾液を飲み込んだ。教卓に戻り、名前を確認した。変わった苗字で読めなかったが、下の名前はジョーだった。
                 ☆
 放課後、B組にはエリカとスミレが二人だけでいた。生徒用の机を二つ、向かい合わせに並べている。校長の話を伝える間、スミレは口を挟まずに聞いていた。
 本当にいい女だと思った。ルネサンスの画家たちがいたら、先を争ってモデルにしただろう。宗教画の聖マリアのモデルに彼女を選んだだろう。可憐とか優美とかそんな熟語では言い表せない。エリカは涎が零れるのを耐えた。彼女はバイセクシャルだった。
話が終わるとスミレは静かに、
「そういう話なのは、わかっておりました」
「そう。コーヒー飲む?」
「頂戴いたします」
 エリカはコーヒーを差し出した。量販品の陶器のカップに注がれたコーヒーを、相変わらずの無表情でスミレは上品に口をつけた。
「毒とか気にしないの?」
「入っていれば匂いでわかります。それに私には大抵の毒物は効きません。訓練で耐性を身に付けました」
「そう。先ほどの話も、気にせず飲んでくれるかしら?」
「考える時間を下さい。すぐに回答できません」
「条件も破格。部下になりたいと言っているようなものよ」
「そのような問題ではありません。私もいつもまでもこのような生活はしたくないのです。
 私の養父―既に死んでおりますが―は私に普通の生活を送って欲しいと望んでおりました。養父には感謝しております。普通の生活を送れるようにするのが、養父への恩返しです。でも日本ではそれができません。あまりにも顔と名前が知られてしまいました。だから、お金を貯めて、海外に移住するつもりなんです。卒業したら、工場は校長先生にお返しします」
 エリカは我慢ができなくなって、テーブルの下で履物を脱ぎ、スミレに向かって足に伸ばした。足の裏で彼女のくるぶしを撫でるが、彼女は微動だにしなかった。
「海外に行ったらどうしたいの。やりたいことでもあるの」
 頬に手を置き、エリカは尋ねた。
「仕事を探してその国に馴染むつもりです。やりたいことはたくさんあります。一度の人生では足りません。
 私は本が好きです。いつかダ〇ンジャンのようなファンタジーを書いてみたいのです。ですが、私には知識がありません。それでも私のやりたいことです。
 私はアニメが好きです。いつか京都〇ニメーションのようなアニメを作りたいです。ですが私には絵心がありません。それでも私のやりたいことです。
 私は子供が好きです。いつか保〇士になってたくさんの子供に囲まれたいです。ですが」
 スミレは初めて微笑んだ。とても悲しそうな顔だった。
 エリカはその笑みを写真に撮って永遠に見ていたいと思った。スミレが話している間、その声に聞きいった。彼女の口が動くたびに、上下の唇を繋ぐ唾液が伸びて切れるのが官能的だった。エリカは自分の股間に手を伸ばし、擦った。
「私の体に染み付いた血の匂いで、子供たちは私を嫌いになるでしょう。それでも私のやりたいことです」
「普通の生活に憧れているのね」
「はい。ですので、校長先生のご期待には添えません」
 ふふん、とエリカはほくそ笑んだ。普通の生活をしたいという理想と、そのために暴力と殺戮の日々を過ごしている矛盾に満ちた三年間を想像した。
「戻れると思うの?」
「戻ります」
 強い口調だった。断固たる決意を感じた。そして、
「先生、私からも質問させて下さい。どうして理科の先生がレイプされている時に助けて下さらなかったんですか。性犯罪は重大な神への反逆です」
「私は狂育者だからね。お金が入らない仕事には口を出さないの。あなたは性的なことが嫌いなの?」
「とても嫌いです。本日殺した三人の家族も始末するように手配しました。性的な事柄が嫌いなのです。特に卑劣な手段は特に嫌いなんです」
「処女?」
「はい。私は、結婚する人としか関係を持ちたくありません。ですので、先生は諦めて下さい」
 いい加減我慢の限界だったのか、青い海の瞳が荒れだした。エリカは撫でるのをやめた。フフッと笑いが漏れてしまった。
「厳しいわね。あなたがとても怖いわ。あなたは?」
 スミレは小さく笑った。目が薄くなり、手で口元を隠した。ゾクゾクするような妖艶な表情だった。
「私も先生がとても怖いです。とても怖いので、この話は少し考える時間が欲しいです……そろそろよろしいでしょうか。外にいる友達が暴れそうな気配がします」
 二人が教室を出ると離れたところに、仲村がいた。敵意に満ちた目でエリカを見ている。
「お待たせ。帰ろう」
 スミレは仲村と並んで階段を下りていった。
「何を聞かれたの?」
 玉を転がすような声で仲村は尋ねた。スミレは、
「学校を出たらゆっくり話すよ」
 エリカは職員室に戻ろうと、少し距離を開けて彼女たちの後をついていく。階段途中でスミレが、
「何か用があるのでしょうか」
「職員室に戻るだけよ。それとも私が後ろにいると怖いの?ゴリラの山の大将さん」
 仲村が振り向き怒鳴った。
「ちょ、山とは何さ!山脈だし!」
「怒っている点が良くわかんないんだけど、先生に失礼な言葉は控えてよ。何者か話したじゃん」
「フン!」
                     ☆
 その時、一人の生徒が階段を上がってきた。ジョーだった。すれ違いざまにスミレを睨みつけて、階段を駆け上がっていく。
「先に行ってて」
スミレはジョーの後を追いかけて階段を上がっていった。仲村はポツっと、
「諦めないね」
 一階で仲村と別れたエリカは踵を返し、階段を駆け上がった。B組の教室に戻ると、ジョーとスミレが向かい合っていた。悪趣味に、陰からエリカは覗いた。
「ジョー、この間の話いかがですか。明後日の日曜日にジ〇リを見に行く話なのですが」
「行かないって言っているだろ!もう俺に関わるのはよしてくれ!クソ、定期券を忘れたばっかりにお前と会うなんて!どこにしまったんだろう。いつまでいるんだよ。とっとと帰れよ。しつこいんだよ」
「・・・・・・ですが」
 ジョーはスミレに構いなく机やロッカーを漁り、定期券を探していた。鞄までひっくり返している。
「そういえばジョー、昨日十八歳の誕生日でしたよね。おめでとうございます。私も先月十八歳で・・・・・・だから」
「帰れ!」
 スミレはうなだれて教室を出てきた。咄嗟に天井に張り付いたエリカにも気が付かない。
 しばらくしてジョーが舌打ちして教室から出てきた。頭をかきむしり不機嫌そうだった。定期券は見つからなかったようだ。
 エリカは音も立てずに廊下に舞い降り、教室の窓から外を眺めた。校門で仲村が不安げな顔で待っている。スミレが背を丸めて出てきた。夕陽に当たった彼女の姿は弱々しかった。
 職員室に戻るため、再び階段をエリカは下りた。二階に着いた時、怒鳴り声が廊下に響いた。
「やめろ!何をするんだ!」
 ジョーの声だった。エリカは声のする方に向かう。男たちの声がする。ジョーを入れて三人の声だった。
「お前、あの女にイチイチ喧嘩売ってんじゃねえよ」
「あの女がキレなくても取り巻きの二人がキレて、俺たちが巻き添えになったらどうすんだよ」
「知るか!自分の身は自分でどうにかしろ!」
「偉そうなことを言える身分なのかよ!お前が男娼なのをみんなにばらすぞ!」
「う、うるせえ・・・・・・」
 殺意のこもったジョーの声。
「コイツ、生意気だ。犯してやる!」
「やるなら・・・・・・金を払えよ・・・・・・」
「ウッヒャー!しゃらくせえ!黙らせてやる!」
「や、やめろ!あぉう!」
 バックルを外す金属音とジョーの悲鳴が重なった。二年生のクラスの一つからだ。再びエリカは覗き込む。
 (R18のためカット)

「ん、あ、ぶぶ!んんんんん!」
(R18のためカット)

「あ、あぁぁぁ!やだ!やだあああ!」
(R18のためカット)

「定期券を返すぜ。これがなければ学校に戻ってくると思っていたんだ。やれやれ!女を犯したら丹羽に殺されるからな。文句だけ言うつもりだったが、コイツはいい。あの女に絶対助けを求めない。だから俺たちが何をしてもいいんだ!ジョー!また無料でやらせろよ!」
「便利な男なのね」
「そうさ・・・・・・うわ!」
「眉のない子、もう死んでいるわよ」
頬に血を浴びたエリカは、眉なしの心臓を鼻ピアスに投げた。眉なしは彼女の背後で、胸に穴を開けて死んでいた。
「い、いつの間に」
「片腕七つ道具……空手チョップ!」
 エリカの義手が鼻ピアスの頭蓋骨を粉砕した。
 断末魔の悲鳴は、気絶したジョーには聞こえなかった。

 ジョーが目を醒ますと見知らぬ部屋に寝ていた。簡素なホテルの一室。ふかふかの暖かなベッドが一つ置いてあり、そこに横になっていた。部屋には据付の家具以外何もない。
「何もない部屋で驚いたでしょう。仮の住まいよ。学校での仕事がすめば出て行くだけだからね。着替えだけ持って出歩いているの。あなたの体が汚れていたから勝手にお風呂で洗ったわ。服もボロボロだったから新しいのを買ってきた」
 エリカがバスローブ姿で現われた。豊満な胸にしなやかな足、そして水滴が残る彼女の右腕にジョーは注目した。
 肩口から鋼鉄製の義手が垂れていた。無数の配線が血管のように走り、無数の小型ランプが点滅している。そのアンバランスさが妙にエロかった。ジョーは頭を振って、
「な、なんで、俺は・・・・・・こ、ここに!」
「眉毛のない男と鼻にピアスつけた男は、もうこの世にいないわよ」
エリカはジョーの隣に腰を下ろした。腰のラインがタオルに張り付き、くっきりと見えた。彼らの死を知って、ジョーはホッとした。しかし、
「見たのか?」
「最初から最後までね・・・・・・」
「畜生。あんな姿を見られるなんて。死んでしまいたい」
 ジョーは嗚咽を漏らした。エリカは尋ねた。
「丹羽さんに話したら?ああいうのは嫌いなんでしょ」
「誰がそんなことをするか!俺はあいつが大嫌いだ!」
 ジョーは湿った声で怒鳴った。丹羽スミレの名前なんて聞きたくなかった。
                 ☆
 ジョーはスミレと幼馴染だった。六歳まで二人は一緒に過ごした。スミレはロシア人のハーフで、髪の色や瞳の色がみんなとは違っていた。それを理由にいじめられた時、ジョーは彼女を庇った。
「やめろってば」
 ショーは小さな時から正義感が強かった。だからいつもスミレを守っていた。
「ジョー、大きくなったらお嫁さんにしてよ」
 と、スミレはませたことを言った時、ジョーは恥ずかしくてもじもじした。しかし、スミレの両親が死に、彼女は香港に行ってしまった。突然のことに衝撃を受けた。
 中学でスミレと再会した。泣き虫でいじめられっ子だった彼女は、誰もがうらやむ才知と美貌の持ち主になっていた。
「ジョー、久しぶり。私を覚えている?」
「あ、あああ……」
 照れくさくて何も話せなかった。でも、嬉しかった。
しかし一ヶ月も経たないうちに、スミレは警官を殺して少年院に入った。ジョーはショックを受けた。スミレは香港で殺し屋の養子になって、その世界では有名な殺戮マシーンになっていた。
 ジョーはDQNが嫌いだった。社会の秩序を乱す連中だからだ。だから、スミレがそういう連中よりも劣悪な存在になったのが、どうしても許せなかった。
 スミレが少年院から戻ってきた時、誰も彼女に近づかなかった。ジョーもそうだった。
「ジョー……教科書忘れちゃったから見せてくれる?」
 一度だけそういう時があった。でもジョーは拒絶した。スミレは悲しそうな顔をした。
 学校に居場所のなくなったスミレは仲村と交流し、半年後にまた少年院に入った。
 その過程で土建会社の社長だった県議を殺した。県内最大の規模で、社長の死で会社は倒産し、千人規模の失業者が生まれた。その中の一人がジョーの母だった。早くに旦那を亡くし、気丈に息子を育てていた母は、再就職ができず病に倒れた。ジョーはスミレを憎んだ。
 ジョーは勉強ができなかった。やらないでできないタイプではない。やってできないタイプだった。だからどうしようもない。中学を出たら働こうと思っていたが、母が必死に頼み込んで高校に進学した。受け入れ先は偏差値一桁の射手前工業しかなかった。
 そして、よりによって丹羽スミレもいる。彼にとって最悪だった。自分の破滅を引き起こした女がいるなんて、耐えられなかった。しかし、母の必死の懇願で彼は退学することができなかった。
 中学では生活保護で生活ができたが、経済の悪化で生活保護制度は消滅した。そして射手前工業の生徒を雇ってくれるバイト先はなかった。やっと新聞配達のバイトを見つけたが、フェイクニュースばかり流して、購読者数が激烈な減少を見せている媒体の給料は、全然足りなかった。
 だからジョーは男娼として体を売ることにした。顧客は老若男女問わず。屈辱だった。売春なんかしたくないのに。でも、そうしないと生活できなかったし、母が死んでしまう。
 (R18のためカット)

当然学校にはバレないように注意していたが、先日鼻ピアスと眉なしに目撃され、今日に至ったのだ。そして今日は、見るからに意地の悪そうな狂育者に目撃された。あまつさえ、スミレに助けを求めろと言う。侮辱以外の何物でもない。
 ジョーは憎しみのこもった視線をエリカに向けた。
「俺を馬鹿にするなよ。勉強はできないが、お前にバカにされるような生き方はしてない」
「まあ、確かにあなたは、勉強はできないわ、今日の英国数のテストだけ採点したんだけど、他の子はみんな三科目合計二七〇点ちょうどなのに、あなただけ、三十点ちょうどだった。丹羽さんは満点なのにね」
 エリカはジョーに顔を近づけた。シャンプーとエリカ自身の体臭の香りが混ざり、股間が熱くなった。化粧を落とした顔も、エリカは美しかった。色っぽく、鼻はすっと通り、今度は目を背けることができなかった。
 男娼として数々の客を取ってきたが、性風俗に来る客はどうしようもない連中ばかりだった。金は踏み倒す。風呂には入らない。痛いことをする。何より醜かった。心も体も。男娼を始めてから性的なことが嫌いになっていた。
 しかし、エリカの体は極上だった。ジョーは絶望した。自らのオスの本能に絶望した。
「馬鹿でも私、あなたが欲しいな」
 誘う、かすれた声。ジョーはエリカを突き飛ばそうとした。しかし手を捉まれ、強い力でベッドに押し戻された。
「犯されている時のあなたは素敵だった。その体も素敵」
 発情したエリカは言った。
「金払えよ。それで、俺は食っているんだ!」
 ジョーは吠えた。金を貰うことで仕事だと割り切ることができた。しかし、
「セックスにお金を払うのってモテないヤツのすることじゃん?私は違うのよ。
ねえ、代わりにさ、スミレに付きまとわれないようにしたくない?私にあなたをくれたら、教えてあげるけど。ダメならいいわ。でも私がうっかり、今日会ったことを彼女に話したら、どうなるかな。ずっとスミレはあなたを心配して、今以上に付きまとうわよ。あなたはこう思われるの。女に守ってもらっている肉便器って」
「黙れ!」
「アッハハ!でも、私のことを好きになってくれたら、色々頑張ってもいいんだけどね」
 と、妖艶な笑みでエリカは見つめた。
「ふ、ふざけ・・・・・・ん!」
 エリカの唇がジョーの口をふさいだ。

(R18のためカット)
 本能と理性の葛藤だった。こんな女に抱かれるなんて嫌だった。金をよこせ。そうすれば仕事になる。そうでなければ……なんなんだ。
ジョーが黙っていると、それを拒否と捉えたのだろう、エリカはムッとして、
「じゃあ、いいわ!仕方がないわね!でも明日のホームルームでは、彼らがいなくなった理由を言わないといけないの!何があったかをみんなに説明する義務があるの。私、先生だから!」
「み、みんなの、前では、や、やめくれ・・・・・・」
 エリカの恐喝にジョーの声が震えた。
「あなた、人にはやめろって言うのに、相手の要求は全部無視するのね!ワガママよ!選びなさい!私に抱かれるか、みんなにバラされるか。フフッ、バラされたらもう学校こられないわね。あなたのお母様もがっかりのあまり、死んでしまうかも!お母様にもお話ししないとね!」
 もっとも避けたいことだった。ジョーは母に男娼のことを隠していた。自分のために息子が売春をしているなんて女親が知ったらどうなるのか?
 ジョーはボロボロ涙をこぼし、
「わかった・・・・・・わかったよ!でも、約束しろ。俺がスミレに付きまとわれないように協力しろ!」
「わかったわ」
 その瞬間、エリカの唇が押し寄せた。手はペニスをしごき、舌も口内をとめどなく犯した。エリカはバスローブを脱ぎ捨てた。

(R18のためカット)
「あぁ!一番好きなところに当たる!」
「ここが好きなんだ」
「うわあ!あん!あ、あ、ま、またくる!ああ!」
(R18のためカット)

                 ☆
 夜明け前にエリカは目が覚めた。隣のジョーは寝息を立てている。その頬にキスをし、浴室に向かおうとしたが、しっかり立てない。余韻がまだ腰に残っている。
 フラフラと窓際の椅子に座る。そこまで歩くのが精一杯だった。タバコに火をつけてスミレを想い浮かべる。ジョーのようなイイ男が好きだったし、美しい女も好きだった。特にスミレのような美しく強い女が好きだった。
 しかし、スミレは拒絶した。それが一番嫌いだった。自分のセクシャルに絶対の自信を持っていた。相手が男だろうと女だろうと。だから拒絶されるのはもっとも不愉快な事柄の一つだった。
 スミレを苦しめたい。
 だからジョーに近づいた。寝取ろうとして。しかし、思った以上に満足な時間が過ごせた。
 ジョーとの交わりでスミレへの復讐心は消え失せた。代わりに、ジョーに付きまとうゴキブリに思えた。ジョーを自分だけのものにしたくなった。ジョーに寄り付く女は皆殺しにしたくなった。
「渡さない」
 校長の依頼で受けた仕事だったが、金の問題ではなくなっていた。

 

 土曜日の夜、スミレは仲村を自宅に呼んで、夏休みの生産計画を練っていた。
夏休み中も武器工場は稼動している。反米国家から大型の案件を受注できたので、工場はフル稼働だった。それゆえに生産工程の管理が必要だった。
 スミレは忙しかった。工場の管理とテロリストと現地での折衝。夏は海外に行きっぱなしだった。また資金管理のために絶えず通帳を見なければならなかった。
「百億の貯金ができたけど、円安で一アメリカドルが一千万円ってあんまりだよね。千ドルで何ができるんだろう」
 スミレは仲村にぼやいた。仲村は工程表と発注書の納期を調整しながら、
「工場の利権を手に入れてなかったら、どこにも行けなかったね」
 経済破綻した日本円は信用がなかった。ルートは凄まじく悪化し、第二のジンバブエドルと呼ばれていた。
アメリカは無理だな……ブラジルはどうかな?一レアルが百万だよ」
「仲村さんが一緒ならどこにでも行ける。ジョーも一緒に行けたらな……」
「まだ言ってんのかよ」
 仲村はムッとした。仲村はスミレとジョーは別世界の人種だと思っていた。かつての間柄を詳しくは知らない。でも、決して交わることのない世界に生きていると思っていた。それにジョーはスミレを嫌っていたのだ。彼は仲村を除いて、スミレに楯突ける唯一の人間だった。いい男だとは思っていたが、二人は交差しない道を歩いていると思っていた。
「ごめんよ」
 と、スミレは謝った。
                 ☆
 それでもジョーを愛している。
 同級生と殆ど交流がなく、誰がどのような進路を選んだのかまったくわからないまま、スミレは射手前工業に進学した。
 そこでジョーと再び出会った時、最初のうちは後悔した。中学卒業と同時に、ジョーと離れられてホッとした想いがあった。ジョーを愛していた。でも自分はジョーに適う女ではない。あまりにも嫌われる行いが多すぎた。
 だから高校で再会した時、衝撃の方が強かった。またジョーに冷たい目で見られるのか、と。
 しかし、運命めいたものも感じたのだ。
彼を忘れたことはない。平穏だった幼い日々の記憶は、殺伐とした日常の中で一層の輝き、憧憬を与えた。普通の人間なら忘れているだろうが、しっかり覚えている。あの約束を忘れない。
 スミレをいつも守ってくれたのがジョーだった。優しくて弱い者の味方だった。だから好きだった。ずっとずっと好きだった。
「ジョーのお嫁さんにして」
 愛を知るには早すぎた。でも、ずっとずっと愛している。
 中学で再会したジョーは男になっていた。色っぽくて艶美な男になった。肉体は無駄がなく引き締まっていた。スレていない、時には幼くみえる性格も変わらず、年を経るごとに魅力的な男になって
(25870文字(R18描写割愛後は22733文字)/51741文字)

 

○参考資料・元ネタ

(2021.1.9掲載。遅くなってごめんなさい)

ストーリー全体の世界観などは、
黒澤明『用心棒』
・石井聡互『狂い咲きサンダーロード
・ロバート・クローズ『燃えよドラゴン
クエンティン・タランティーノキル・ビル
ジミー・ウォング『片腕ドラゴン』を
ダシール・ハメット『血の収穫』
黒澤明『用心棒』
セルジオ・レオーネ『荒野の用心棒』
深作欣二仁義なき戦い
石井聰亙狂い咲きサンダーロード
ジョージ・ミラー『マッド・マックス』シリーズ
特にラストは、
長谷川和彦太陽を盗んだ男
ダン・オバノンバタリアン
から。ネタバレかな?

○五木エリカ
ガールズ&パンツァー』の逸見エリカから。片腕設定は『片腕ドラゴン』『片腕マシンガール』から。

○丹羽スミレ
主人公のモデル及び名前の元ネタは暁佳奈『ヴァイオレット・エヴァーガーデン(上・下、外伝、フォーエバー)』から。なおヴァイオレットは花の名前ですみれ→スミレ、ガーデンは庭→丹羽となってる。 日本で金髪になるとロシア人とハーフにするしかない。
性格は、下記二つの作品のヒロインを混ぜた。
如月ハニー飯坂友佳子作画/永井豪原作・原案『キューティーハニーF
・名取羽美/久米田康治かってに改蔵
主人公の必殺技(かかと落とし)は・アンディ・フグ(1964-2000)の決め技から。もう20年も経つのか…
幼少期の両親の死、復讐、殺し屋になるくだりは、『キルビル』のオーレン石井の生い立ちから。
クエンティン・タランティーノキル・ビル

○岡村巡査
キル・ビル』のロリコン趣味のボス松本及び『レオン』の悪徳警官スタンフィールド、そしてうちの首席。
リュック・ベッソン『レオン』

なお、作中でレビューした映画は、
・アレクセイ・シドロフ『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』

ショート・ショート集『天使のいる地獄』(試し読み付き)パルプフィクション文庫

『天使のいる地獄』

(ショート・ショート集・パルプフィクション文庫)

※1試し読みは下をスクロールして下さい。目次をタップすれば飛びます。

※2試し読みは全てのショート・ショートの半分だけを掲載しております。

  

お久しぶりです。伊藤です。

やっと新刊の告知が出来ます。

今回はなんと二、三年ぶりの創作ですパロディはありません)。

映画評論ではないのでご注意ください。

本作ともう一作のR18短編『片腕アラサー 対 血みどろスケバン狂騒曲』を2020年11月22日の第31回文学フリマ東京にて散布致します。

あん、コロナだから今回もパス!という方はご安心。

今回はデータ販売にてBoothで散布するので、逃げられないよ。ええな?

なお今回はパルプフィクション文庫という実験企画を立ち上げました。

詳細はこちらから。

f:id:andou_harumi:20201113215643j:plain

ショート・ショート集「天使のいる地獄」

 

文学フリマ販売価格:300円(Booth価格:300円※データ販売)

B級映画ワゴンセール企画本につき二冊で500円☆

 

ページ数:40p

発行者:革命的cinema同盟

編集:デルモンテ岡村

執筆:オー・ハリー・ツムラ、伊藤チコ、デルモンテ岡村

表紙:伊藤チコ

表紙の影絵:SILHOUETTE DESIGN、(@TopeconHeroes)      

kage-design.com

印刷・製本:ちょ古製本工房

ブース販売ページ:下記リンクよりどうぞ(2021.1.9遅くなって申し訳ありません)

andou-harumi.booth.pm

※1試し読みは下をスクロールして下さい。目次をタップすれば飛びます。

※2試し読みは全てのショート・ショートの半分だけを掲載しております。

 

☆あらすじ☆

天国を解雇された!チクショウ、神様め!

可哀そうな天使が地獄で再就職するが、

求人票に隠された驚愕の真実に頭を抱えた(表題作『天使のいる地獄』)!

いつの世も人は欲深く、罪深い……。

金欲しさに大×を売る!(『×麻になーれ』)

詐欺を働く!(『説教屋』)

そして人を傷つける!(『片腕アラサー』他たくさん)

狂気の花園、カオスな現代社会では

×学生ですら怠惰な金儲けにまっしぐら!(『地球ぽかぽか計画』『お金の木』『世界最速のコケコッコー』)

だがしかし!悪は滅びる!

リアルでは死に絶えた善と正義のラリアットでボンバイエ!

作中限定にて、

「お仕置きよ!」

アッハイな人々が自業自得に滅んでいくザマを見つめた16作収録!

道徳教育に世界は活用せよ!

 

【試し読み】(各話半分だけ掲載) 

大麻になーれ

 大好きなアニメのBlu-rayが欲しい!しかしお金がない!そこで私は大麻を売ることにした。違法なことは儲かるのである。
 とはいえ、のんびり栽培している余裕はない。Blu-rayセットには数量限定のグッズがたくさんついていた。売り切れる前に買わないと!
 私は近所の空き地に生えている雑草を集めた。それを乾燥させて、安物の袋に詰めて繁華街に向かった。あちこちで中毒者が大麻を求めていた。私はその中で、一番お人好しそうな中毒者に声をかけた。
「珍しい大麻だよ」
「いくらだい?」
 事前に相場を調べていたので、それよりもほんの少し高く値段をつけていた。こういうのは安くすると怪しく思われる。中毒者は偽大麻を見て、
「なんだいこれ?」
「珍しい大麻だろ?吸ってみなよ」
「本当に大麻なの?」
「当たり前じゃん!一流の大麻だよ、珍しいだけさ」
 お人好しは怪訝そうな顔をした。こういう時は余裕を持って振舞った方がいい。私はお試しで吸うように勧めた。しかし、吸ってみると怪訝な顔で、
「本当にこれ大麻?」
「珍しいやつだからね。慣れるまでに時間がかかるのさ」
 そこで私は革命的なひらめきを得た。
「一袋、試供品であげるよ」
「本当に?」
「もちろん!新規開拓には時に損が必要なのです。さあ、たっぷり吸ってもっと欲しかったらまたおいで」
 それを数人に行ってみた。原材料は無料だから懐は痛まない。無料に人は弱いのだ。一週間して、お人好しの中毒者に再会したら、かなり満足していた。
「初めは怪しかったけど、吸っているうちに、これの良さがわかってきた。やっぱり高級品はいい!」
 その中毒者はたくさん買ってくれた。他の中毒者にも軒並み好調で、私は大儲けすることができた。
 思い込みの力は強い。本当は効果がないのに、思い込むと脳が騙されてくれる。思い込みの力はトラブルを招くことも多いが、おかげで私はBlu-rayを購入するだけでなく、転売用にもたくさん買うことができた。資本主義万歳!
 もっともっと欲しいものがある。
もっともっとお金が欲しい。
お金がたくさんあればもっと幸せになれる。
私は偽大麻ビジネスに夢中になった。
 騙された連中からの口コミで、私の名前は売れていった。そして行列ができるまで成長した。
「ヘヘ、こんな雑草が大麻になるんだ」
 毎日毎日草をむしりながらニコニコだった。
当然問題は生じてくる。警察と怖い人だ。でもすぐに解決できた。
 警察は毎日のようにやって来た。でも、私が販売しているものは、雑草を乾燥させたものだ。警察がいくら検査しても雑草に変わりはない。私は毎日逮捕されて毎日釈放された。そのたびに警察を訴えてたくさん慰謝料を貰うことができた。やがて市民団体に予算の使いすぎを指摘されて、署長は大変な目にあった。
 怖い人は、私の周りを警察がウロウロするよう
(1160文字/2321文字)

 

②説教屋

 幼少期に愛読したマンガが欲しいよ。でも、高くて買えない……そこで私はパチンコ店に飛び込んだ。そして身ぐるみ剥がされてしまった。可哀そうな私は仕方がなくお年寄りを襲撃することにした。全部社会のせいだった。
 まず一人暮らしの老人の家を探す。ジジイよりもババアがいいだろう。私は八十歳くらいのババアに狙いを定めた。家にいる間に押し掛ける。というのも、大半のお年寄りは貴重品を持ち歩いていて、留守の間に行っても、もぬけの殻なのだ。
私は金属バットを持って押しかけた。
「やい、ババア!老い先短いんだから貯金と土地の権利証をよこせ!」
 ところがババアは空手の達人だった。私は瞬く間にボコボコにされ、縛り上げられた。
「ワヒィン、何でもするから許して!」
「フフッ、若いのに強盗なんて元気があっていいこと。ちょうど医療費と税金が増えて、生活に困っていたところなのよ」
 話を聞くと、歳をとって引退していたけど、ババアも相当のワルだった。私はババアの手下になって『説教屋』ビジネスを始めることにした。
 ババアの肝の強さを思い知った。まずババアは繁華街に行き、ヤンキーを説教する。
「まあ、あんたたち、森鴎外なんか読んで!小説を読むと現実と虚構の区別がつかなくなるわよ!」
「何を言っているんだ、ババア」
「ぶっ飛ばしてやる」
 現代は年寄りが排除される時代だ。ヤンキーたちはババアに殴りかかった。
でもババアは空手の達人だった。ヤンキーの拳なんか痛くもかゆくもない。上手に受け流している。それがこのビジネスの肝心なところ。のされてしまったら大変だ。
通りすがりを装った私が通りがかり、彼らを注意する。
「私は弁押士(べんおし)だ。傷害罪で訴えられるぞ」
 弁押士は誤植ではない。ババアは長年の犯罪キャリアを披露してくれた。
「あんた非弁行為って理解できる?」
「しんにゃい」
「弁護士を騙ることを言うのさ。れっきとした犯罪だよ。ちなみに警察を騙るのも犯罪なんだよ。
人間は愚かなもんでね。何かトラブルがあるとすぐ『警察を呼ぶ』とか『弁護士に聞いた』と脅すんだけど、下手すると恐喝になるからね。悪いことを考える時にはよく覚えておくんだ。悪人になるには法律に詳しくないと。
 さて、弁護士と弁押士、一文字違うのに、その言葉の持つインパクトは大きい。特に頭がカッとなって冷静な判断ができない人間には、とっさに言ったベン『オ』シという言葉が、『弁護士』に聞こえる。あたしにいちゃもんをつけられてカッとなって殴って来る連中の知的レベルでは、『べん』と『し』だけで弁護士になってしまうだろうけどね。
 また『お』と『ご』は母音が同じだから、普通、勘違いするね。
 揉めている時に、あんたが弁押士と言えば大半の人間は聞き違いをする。そうすればあたしらの言いなりになるさね」
「弁護士って言ってもいいんじゃないの?」
「録音されていたら大変だからね。あと、弁押士という言葉は非常に紛らわしいから、あんたは『弁押士』という社名の会社を持つことにしよう。名刺も作ろう。トイレの紙でいいのさ。会社を作るのも簡単だしね。つまり『私はベンオシという会社の社長だ』と言っているにすぎない、という証拠をキチンと作っておくんだよ」
「ババァ!賢い!うう!私も偏差値が高ければ!」
「フフッ、さて実践に行こうかね。弁押士のあんたに注意されたヤンキーは」
 急にオドオドしだした。ババアは痛がって苦しむ演技をした。私は、 
「ああ!か弱いおばあさん。ヤンキー少年にリンチされて瀕死になっている。治療費がかかりそうだ!年金暮らしにゃ大変な負担だ!」
 大声を出して騒ぎ立てる。みんなが集まって来る。ターゲットにされたヤンキーたちは、一刻も逃げたい表情になる。
「ここであんたは腕を組んで、彼らの前を遮るんだよ。『ああ、大変だ。大変だ。ババアが治療費で破産して自殺する。お金がなくて破産する』ってね」
「なんで腕を組むの?」
「何かあって、あんたが相手を触った時、相手があんたに突き飛ばされたって言いだしたら面倒だからね。『転び公妨』って聞いたことないかい?警察が怪しい人間を捕まえる時に、わざと転んで公務執行妨害と傷害でしょっ引くやり方さ。理屈は同じなんだよ」
「直接金銭を要求するのは恐喝になるからかな?」
「その通りだよ。さあ、アンパンをあげよう」
「ヤッタ!」
「そうすると」
 ヤンキーたちは有り金全部を出して、これで勘弁してくれ、と言って逃げていった。そういう風にしても稼げる額は僅かだった。分け前は八対二だった。もっとも、ババアは殴られる側だから、文句は言えなかった。
「僅かな額だからいいん
(1878文字/3756文字)


③時を超えてやってきたミー

 初めに超空間を移動する二隻の宇宙船の説明をしよう。
 先を行く船は古代の恐竜たちをたくさん積みこんだ密輸船だ。この船の操縦手は未来の世界で、非合法に恐竜たちをブルジョワに売り捌くのが生業だった。
 その後ろを追いかけるのは時空パトロールだ。ずっと密輸船に止まるように警報を鳴らしているが、止まらない。返事の代わりに大砲が飛んでくる。仕方がないので自衛のために発砲した。
 攻撃は密輸船の倉庫に当たった。壁が壊れて中から、特殊な機械で小さくされた恐竜たちが、ポロポロこぼれて落ちていく。
時空パトロールは、この落し物の回収を優先することにした。恐竜の存在が認知されていない時代に落ちると大変だ。
回収は困難を極めた。ある時代のある海域に落ちた恐竜は、衝撃で元の大きさに戻り、客船を襲いだした。また、ある山に落ちた恐竜は、住民から小人とか天使とか呼ばれた。それでも、なんとか回収作業は進んだ。残り一匹である―。
 その少年は、自分の家でスヤスヤ眠っていた。真夜中だった。だから早すぎる目覚ましが、窓ガラスを破って飛び込んできた時には驚いた。その恐竜は、翼が生えていた。鳴き声は、
「ミーミー」
 だったので、少年はミーと名付けた。
 ミーは窓ガラスで怪我をしていた。少年は両親に気が付かれないようにこっそりとミーを治療して、水と食料を与えた。ミーはゴクゴクたくさん水を飲んで、鶏肉を選んで食べた。食事を終えると、ミーは満足そうに少年の周りを飛んだ。すっかり少年に心を許し、ミーミー鳴いて甘えた。
 少年は周囲から頼りない、大人しい性格と思われていた。女の子からは馬鹿にされ、男の子からはいじめられた。周りがこうだと決めつけると、そういう性格になってしまうものだ。事実、少年はそういう性格になっていた。
それがどうだろう!この不可解な空飛ぶ生き物は自分に頼り切っている!初めての経験だった。
 急に強い光が部屋に差し込んだ。時空パトロールだ。
「ヘイ!小僧、そいつを渡しな!」
 子供に何かを頼む時、こんな大声で怒鳴ってはいけない。おまけにこの呼びかけをしているのは、声が低く、毛むくじゃらで強面のパトロールだった。姿は少年に見えないが、怖がらないはずがない。だから、
「ミーを狙う悪いヤツが来た!逃げるよ、ミー」
「ミーミー」
 と、逃げ出すのは当然だった。
 少年とミーは町を駆け抜けて山の中に逃げ込んだ。茂みに囲まれた小さな丘に隠れていると。背後から、
「どうかしたのですか?」
 と、女性の綺麗な声が響いた。
振り返ると、天国から舞い降りた天使みたいな美少女がそこにいた。具体的にどのような美少女かだって?それはいつだって書き手の好みにいつも寄りかかってしまうのだ。ほっそりしていて、オパーイが柔らかくて、いい匂いがしてお金持ちで―このくらいでいいだろう。あとは読者が勝手に妄想すればいい。
 しかしこの美少女は密輸船の操縦手である。彼女ほどの美少女ならば他の仕事でも選べば良かったのだろうが、自分で選んだ仕事だから仕方がない。何より彼女はこの仕事が大好きだった。
それに人は見た目が全てである。少年は彼女が自分を
(1272文字/2544文字)

 

④天使のいる地獄

 私は天使。天国で神と人々に奉仕する存在。本来、神の指示を受けて、天国で仕事をしているのだが、先月リストラされてしまった。しかし私に落ち度があったわけではない。全部人間たちのせいなのだ。
 人間は気に食わないことがあると、すぐに犯罪に手を染め、死後地獄に落ちてしまう。いつの時代も天国は不景気で、地獄は好況だ。それが近年顕著になった。己の快楽のために安易に犯罪に手を染めるせいで、現在天国は史上最悪の大恐慌に陥っていた。
 それでも我々天使は、天国で数少ない善人の世話を行い、なんとか仕事を得ていた。しかし、とうとう大規模な人員削減が行われた。リストラされた天使の殆どは、人間の世界に降り立ち、人間に生まれ変わることを選択した。
 私は嫌だった。限りある人生を労働と苦痛に苛まれて生きるよりも、こうして天使のまま、永遠にのんびり生きていきたかったのだ。私は同じ選択をした数少ない仲間と共に、地獄に再就職した。地獄は人員不足で簡単に就職できた。
私は悪魔の部下になった。そしてある街に降り立った。
その街では祭りが行われていた。広場では若者たちが呑気に歌って酒を飲んでいた。悪魔は私に言った。
「おい、新人。あの呑気に酒を飲んでいる連中を、地獄に連れて行こう。いい案はないのか」
「私が天国からくすねてきた矢は、男女に恋心を芽生えさせる力があります。この矢の力を使いましょう」
「待て、カップルを作ってどうするんだ」
「見ていて下さい」
 私は集団から少し離れているところで見つめ合っている、若いカップルの女に矢を放った。矢は女の胸に命中した。もちろん怪我はしない。天使の矢は攻撃するためのものではない。愛を与えるためのものなのだ。
 続いて今度は、広場で騒いでいるひ弱そうな男に、矢を当てた。
命中すると、女は先ほどまで見つめ合っていた男から離れ、ひ弱な男に抱きついた。二人はその場で熱い口づけを始めた。
「おい、我々の仕事は地獄へ連れていくことだぞ」
「いいから見ていなさい。ほら、始まった」
 女と見つめ合っていた男は、大声で喚きながら、ひ弱な男に殴り掛かった。
「おい!よくも彼女を誘惑したな」
「うるさい。お前に魅力がないだけだ」
 男たちの殴り合いは激しさを増し、互いにナイフを持って争い始めた。やがて、男がひ弱な男を刺し殺した。
「ひどいわ。ひどいわ」
 女
(956文字/1913文字)

⑤前人未踏!世界で最も短い小説がついに誕生した!ヘミングウェイの『売ります。赤ちゃんの靴、未使用』やアウグスト・モンテローソの『目を覚ましたとき、恐竜はまだいた』を凌駕する、新たなる物語世界の幕が上がった!さあ、お立合い、お立合い!読み飛ばしたら呪う。次のページをめくれば、ビックリドッキリフォウフォウ!心臓の準備はいいかい?驚いてひっくり返っても知らないよ、二一世紀のトレンドは『自己責任』なのさ。次のページをめくればあなたは世紀の目撃者になれるんだ!知り合い、家族、彼氏彼女に自慢しよう!「それがなに」「で?」って言われたら、適当な言い訳を考えてくれ!準備はいいかい?トイレは行った?お祈りはすませた?生命保険は入った?まず手をこすって深呼吸をするんだ。まだめくるなってば!一生懸命文章を引き延ばしているのに!呪ってやる。ユーは大切な約束がある時に寝坊するんだ。もしくは別の予定を入れてしまって忘れてしまっているんだ。それも二回続けてね。いい加減タイトルを引き延ばすのしんどくなってきたよ。さあ、開くがよい!

(短すぎるから詳細は省略)

⑥誰か助けて!

「誰か助けて!」
 老婆の悲鳴は悲痛であった。
場所は高層ビルの真下。落下してきた花瓶が、路上を歩いていた少年に命中したのだ。
老婆は他人だったが、動かずに倒れている少年を見つけてパニックに陥っていた。他の通行人が救急車を呼んだ。
 救急車を運転してきた女性救急隊員は新入りであった。情熱に燃えていた。救命に生涯を捧げようとしていた。
 いつ何時呼ばれるかわからない仕事だった。勤務時間は不規則である。
「会う時間が減るからやめてくれ」
 五年間付き合った恋人に言われたが、彼女は彼の前から姿を消して、この仕事に就いた。熱意は人一倍あった。
就職試験は難関だった。最終面接に残ったのは二人。どうしても就職したかった彼女は、ライバルのイケメンを痴漢で訴えて刑務所に送り込んだ。一途な人間は怖い。手段を一切選ばない。
 今回が初めての出動だった彼女は緊張していた。必要以上に急ぎ、先輩救急隊員を置いてきてしまった。なので、一刻も早く病院に連れて行かなくては!
 少年を救急車に投げ込んだ。直ちに発車。狂乱した老婆はずっと叫んでいた。その声が耳に残った。
「誰か助けて!」
 横断歩道を横切る子供たちがいた。止まっていては少年の命にかかわる。彼女は子供たちの上を走った。
「急がなきゃ、急がなきゃ」
「誰か助けて!」
 老婆の悲鳴が甦った。
 子供を背負ったジジイが道を歩いていた。道は狭い。速度を落としたら少年が危ない。ジジイは宙を舞った。
「急がなきゃ、急がなきゃ」
「誰か助けて!」
 老婆の悲
(618文字/1236文字)

⑦改心した社長

 警察署の電話が鳴った。一人の警官がそれに出た。
「はい。こちらD警察署」
「もしもしお巡りさん!助けて下さい!」
「どうなさいましたか?」
「仕事帰りに黒ずくめの男たちが、私を車に押し込んだのです」
「なんと、それは誘拐ではありませんか!」
「ええ、私が会社を経営しているからでしょう。景気が悪くて大量に社員をクビにしたのが良くなかった。仕返しだとか話しているのを聞きました」
「誘拐されているのによく電話ができましたね」
「持っていた荷物は全て犯人に奪われてしまいました。しかし、こういうこともあろうかと、靴底に小型の発信機を隠していたのです。扉の外からイビキが聞こえます。どうやら犯人たちは眠っているようです。それで電話をかけました」
「なるほど、今どちらにいるのかわかりますか?」
「今は廃墟に押し込められています。扉は重くてとても開けられません。駅前の道をまっすぐ行って左手に見える大きな廃墟です」
「ああ、あそこですね。私が子供の時からあ
(413文字/826文字)

 ⑧優しい目撃者

女子高校生のDは帰宅途中、不審者に襲われた。暗がりに連れ込まれ、押し倒された。
「やめてください」
恐怖に顔をゆがめた彼女は叫んだ。
 その顔に発情した不審者の男は、デブデブ笑って彼女の胸と下半身をまさぐった。汗臭いデブだった。必死の抵抗をDはしたが、デブはやめてくれない。
トサカに来た彼女は、格闘技の心得があったので、デブの首をへし折って殺害した。師範に一般人には手を上げてはならないと言われていたのに!
 正当防衛とは言え、人を殺して冷静な人はあまりいない。彼女もそうだった。
地面に寝そべる首の曲がった死体のそばで、座り込んで震えていた。どうしよう。人をぶっ殺してしまった。まだ華の十六歳。青春の殺人者になってしまった。
マスコミが自宅の前で列を成して、家族にインタビューをするのを想像した。ああいうのって、整理券配るのかな。どうしよう。頭を掻き毟る。ママは再婚ホヤホヤなのに。秒単位で動揺が激しくなる。Dは生来、小心者だった。
 どれだけ時間が経ったのだろう。肩を揺すられ気がついた。
そばには貧相な、メガネで初老の男が立っている。この男も汗臭い。身なりを見る限り、ホームレスだ。
「何があったのですか。午後の七時を過ぎる時に、JKがこんなところで」
メガネは切迫した声で尋ねた。
 彼女は説明した。婦女暴行を受けかけたこと。首をへし折って、デブをぶっ殺したこと。自分が、テコンドーの世界大会準優勝者であること。そのため民間人に手を上げてはならないと、きつく指導を受けていたこと。ママの再婚相手は十八歳などなど。
「なるほど。確かにあなたは殺人者だ」
メガネは首を振って哀れんだ。殺人者の響きだけで、心がへし折れた。
メガネは少し考えた後、一つの提案をした。
「私があなたの身代わりになりましょう。あなたには未来がある。私には未来がない」
メガネは身の上話を始めた。同人誌作製にのめり込み破産した。家族とも離れ離れ。Dと同じくらいの娘がいることなどなど。
 Dはメガネに同情を覚えた。生来、こういった話に必要以上に感情移入をする性格だった。
「生きる希望は何もない。死んでいるみたいなものだ。せめてこの命を、不幸な若者のために使わせて下さい。優しい目撃者として、私の人生を終わりにさせて下さい」
「でも、私の気持ちは晴れません。人を殺してしまいました。その上、全く関係のないおっさんに罪を被せるなんて。胸が張り裂けそうです」
 彼女は泣き出したが、メガネは強く反論した。
「それは違います。あなたの居場所は刑務所でなく、もっと素敵で明るい世界です。こんなデブのために、その居場所を失う必要はありません」
「でも、私の気持ちは晴れません。人を殺してしまったのです。この上その重荷を一生背負って生きていくことなど、私にはできません」
 彼女
(1142文字/2284文字)

⑨無難なファッション

 青年はバス停に置かれているベンチに座っていた。なかなかバスが来ないのでイライラしながら待っていた。
そしたら、バスの代わりの老人がやって来て隣に座った。
 奇抜な服装だった。とんがった帽子、レンズが片方しかない眼鏡。顔中毛むくじゃらで脂が浮いていた。ネクタイはしていたが、着ているのは襟のない、白いシャツである。履いているのは右が膝まで、左
(167文字/335文字)

⑩片腕アラサー

五木エリカは工業高校で数学を教えていた。ややベージュがかかった銀髪がなびくたびに、男子高校生は内股をもじもじさせる。彼女がグラマーな体で近寄れば、彼らは目を反らす。女教師の鼻にかかった甘い声色で指名されると、野郎たちは失神した。やんちゃなガキも、彼女の言うことはよく聞いた。
女子生徒たちは面白くなかった。下品なツラで発情している野郎と同じ空間にいるのは、気持ちがいいものではない。彼氏にエリカと比較されるのも面白くない。女子生徒の大半はエリカを嫌っていた。でもエリカは反感を気にしていなかった。
学校にはやんちゃな生徒が多くいた。そいつらを仕切るボスがいた。女子生徒だった。スケバンだ。百人中百人がギャルだなあって思う、派手派手した子だった。金髪パッツンスレンダー巨乳の彼女が、トップだった。
彼女もエリカが嫌いだった。男子生徒を金で誘い、
「あのババアを婦女暴行して、学校に来れなくしてください」
 と、何人かに指示した。が、幸運なことにそこまでのことができる男子生徒はいなかった。
「姉さん、それは嫌だよ。俺、豚箱なんかに入りたくねえよ。補導で済む範囲で頼むよ」
「私の言うことが聞けないというのですか」
「やり過ぎはよくねえよ。姉さん、あと一年で卒業だから、今回ばっかりは我慢しようぜ」
 スケバンは歯ぎしりする他なかった。
 ある日エリカは保健室に遊びに行った。ジジイとババアの加齢臭が混在する職員室から逃げ出したのだ。保健室の先生は、エリカと同い年の田中ユリだった。
保健室の戸を開けると、奥のベッドのカーテンが引かれている。誰か寝ていた。エリカが尋ねると、黒髪三つ編みを垂らしたユリが、眠そうな声で三年生の松本ジョーと答えた。
「あの弱そうな子か。保健室登校?」
「今日だけだからわからない。ここに登校するなら退学して欲しいね」
医師免許習得後、大病院の派閥抗争に嫌気がさして、保健の先生に転職した彼女は、屈折した物言いをした。
 ウンコしてくるからここにいろ、とユリは保健室を出た。暇だったエリカは、カーテンをめくってジョーの顔を見た。
彼はベッドに横になり、一人エッチをしていた。拾ってきたらしいエロ本は、雨風でグシャグシャしている。悲鳴を上げたジョーは、エロ本を隠した。
 むあっと男の香りが、エリカの鼻をくすぐった。若い男の香り。胸がドキドキした。もう二年、右手でしかシていない。
エリカはベッドに乗り、ジョーに顔を近づけた。汗ばんでいる。好みの顔だ。ジョーのジョニーは、赤黒く痙攣し、天に向かって伸びていた。
「いい……よね?」
エリカは、唇をジョーに重ねた。二人はファックした。どんな内容かは割愛する。知りたければビデオでも借りるんだ。
長グソから帰ってきたユリは、二回戦に突入する寸前の二人を、保健室から追い出した。
 エリカの日常に楽しみが増えた。彼女はこの男に夢中になった。エリカの日常は退屈だった。ジョーと出会って張合いが出てきた。
「俺たち、付き合っているよな」
休日。エリカの自宅で朝六時からファックしているジョーが、午後三時につぶやいた。
「俺はエリカが好きだよ」
 アラサーのエリカは考えた。十歳の年の差はあるけど、別にいいかな。ジョーの成績や家族について、調べたことがある。
三人兄弟の末っ子だから、親の面倒は見なくていいかも。成績は良好。地元で一番DQNな高校に入学したのは、ジョーの家が田舎過ぎて、一番近い学校がここだったからだ。勉強はできるけど続ける意思はなく、卒業したら就職希望。遅刻も無断欠席もない。アルバイトもしていて、通学用の原付は自分で買ったものだ。気が弱いけど友達は多くて、人間関係も良好。ファックの相性もいいし、数を重ねるごとに巧くなる。
 今まで付き合った男の中で、一番マシだった。自分で見つけた男はゴミばっかりだったし、友達の紹介も出会い系もお見合いも、不良在庫ばかりだった。年齢だけがネックだけど。大家族の末っ子だったエリカは、家のことを考えなくてもよかった。三番目の姉ちゃんだって、二十も上のおっさんとデキ婚した。私はまだ許容範囲だ。別にいいかな、コイツで。うんや、コイツがいいんだ。
「私もよ。ジョー」
エリカは、唇をジョーの下半身に運んで……続きは勝手に想像しろ。
 運命とは残酷だ。いつだってサディストだ。エリカに恋敵が現れたのだ。相手はスケバンだ。
 読者は恋に落ちる音を聞いたことがあるか?スケバンにとっての恋に落ちる音は、猫のゲップだった。
 スケバンは猫が好きだった。学校そばの公園で、野良猫が出没するようになった。スケバンは学校を抜け出し、猫と遊ぶようになった。
「おーよしよし!おーよしよし!」
彼女は猫をもみくちゃにした。
 やがて猫が住めるように、誰かがタオルを敷いた段ボールや食事用のお椀を置くようになった。誰なんだろう、と植え込みに隠れて待ち伏せしていると、同じクラスのジョーが現れ、猫に餌をあげていた。
「おーよしよし!おーよしよし!」
彼は猫をもみくちゃにした。
餌を食べ終えた猫は、でかいゲップをした。
「臭いゲップするなよ」
ジョーは鼻をつまんだ。
 その瞬間だ。恋をしたのだ。視界が揺れる。胸が切ない。彼のことを知りたいし、私のことを知って欲しい。そんな欲求が、スケバンの心を占めた。パシリにしているのは謝るよ。私、あんたが、好き。
 彼女の行動は迅速だった。次の日の放課後に、ジョーを呼び止め、二人きりで教室に残った。
ジョーは怯えていた。またパシられるのかな。
 彼女は彼に思いを告げた。この時、彼女は詩人だった。一晩中、あらゆる書籍の恋と愛をつづった文を読み漁り、それらを下地に己の想いを歌い上げたのだ。その言葉は時代を超えて、恋する男女を繋ぐ名文だった。シェイクスピアも弟子入りを希望するほどの言葉だった。
 でも、ジョーにはエリカがいたので素直に断った。スケバンはキレて暴力を振るった。ジョーは叫んだ。
「エリカはいい女なんだ。俺は彼女を愛しているんだ。話だって合うんだ。体だって合うんだ」
「なんですって……私だって処女なんですよ!」
 頭から血を流したジョーは、毅然とした態度だった。スケバンは驚いた。いつもすぐ泣くのに。土下座して焼きそばパン買ってくるのに。
「お前なんて嫌いだ。もうお前の言うことは聞かない。どんなゴリラみたいなヤンキーを連れてきても、言うことを聞かない。アバヨ」
 ジョーはふらつきながら教室を出た。残されたのはスケバン一人。彼女は泣いた。これが失恋の味か。これが本当の恋の味か。喉がガラガラになるまで泣いた。
だんだんエリカへの憎しみが増してきた。あのアマがいなければ、ジョーは私の物だった。許せない。
 スケバンの行動は迅速だった。用務室から小型のチェーンソーを奪い、職員室に飛び込んだ。中にはエリ
(2751文字/5502文字)

 

⑪五番線二二時発上り列車

 窓枠の中の景色はプラットホームだった。蛍光灯の黄色い光と真っ暗な夜の対比が生み出す、ベンチの影だけが立っていた。
 青年の乗る車両には彼以外誰もいない。終電の列車は強風のため運転を調整している最中で、彼は暇になっていた。彼の視線はホームを彷徨うが、口の端に笑みを浮かべる瞳には何が映っているのだろうか?
 ここで青年がこの列車に乗るまでの経緯をお話ししよう。ご安心あれ。青年のニヤニヤが収まるまでの間だ。
 一年前に同期の女性が辞めた。仕事を変えるためである。二人のいた会社は相応の実績と、知名度を持っていた。環境だって、平均より上だった。
「他のことをしたくなったのです」
 それが退職の理由だった。無責任だとは思わなかった。相応の実績を残した上での退職だった。物足りなくなったのだと彼はすぐに感づいた。
 彼女の退職後強い焦燥感に襲われた。彼女はいなくなって、初めてその大切さに気が付いたのだ。
「どうしていなくなってから気が付いたんだろう」
 後悔しても手遅れだ。しかし、こういう出来事は珍しいことではない。頭の中の写真集にしまい込んで、そのまま本棚にしまって忘れてしまうのがほとんどだ。青年も例外ではなく、彼女との思い出をしまい込んでいた。しかし、心の疲れと時間を持て余していた今は、本棚に手を伸ばすのだった。
 今夜の彼はひどく疲れていた。歩くのもやめたくなるくらい疲れていた。拡声器で悲鳴を上げたくなるほど疲れていた。いくつかの失敗と相当量の不快な気分で彼は疲れ果てていた。
 あら?主人公はまだニヤニヤしている。それだけではない。窓に自分の名前を小さく、人差し指で書いている。何を考えているのだろうか。頭の中を覗いてみよう。
 彼は奔放な想像力を使って、プラットホームに退職した彼女の姿を思い浮かべていた。着ている服のブランド名はもちろん、髪の毛のほつれや香水のにおいまで緻密な設定を定めて、登場させていた。
 彼女は仕事帰りにこの列車に乗るところだった。そこで先に車内に乗り込んでいた彼に気が付くのだ。窓は閉じており、彼女は自分の名前を唐突に―車内から見ると反転していて読むのにちょっと苦労はするが―そこに書くのだ。その隣に相合い傘を描いて、その隣を指先でチョンチョンと―そして青年は気が付かなくてドンドンに変わる―突く。そして彼女は去っていくのだ。ニヤニヤし
(966文字/1933文字)

 

⑫デブとチビは故郷の空

 デブとチビは友達だった。二人は眼鏡のレンズのようにいつも一緒だった。
「見て、あんなところにカメはいる」
「違うよ、あれは俺の村のハゲジジイだよ」
 二人は別々の村に住んでいた。デブはD国、チビはW国の村に住んでいた。二つの村は国境を挟んで隣り合っていた。
この二つの村の境目に、誰も使わなくなった小屋があった。二人はここでよく遊んだ。ずっと一緒だと思っていた。喧嘩しても、翌日には眼鏡のレンズに戻った。
 ある日、両国で外交上のトラブルが起きて、国交が断絶された。二人の住んでいた村は軍の基地になり、村人は他の土地に移動させられた。そして、デブとチビは離れ離れになった。
 そして数年が経った。
まだ両国は緊張している。チビは故郷から遠く離れた国境の町にいた。数年経ってもチビのままだった。
 チビは警備の兵隊だった。一本の白線の向かい側はD国である。自国の領土内に立ち止まって、敵の警備兵と向き合うのが彼の任務であった。
 チビが初めてこの村に来た時、デブに会った。デブはやっぱりデブだった。何から何までデブだった。
 デブは白線を挟んでチビの正面に立った。じっと見つめてきた。チビもそうした。再会を喜ぶところではなかった。緊迫した両国の最前線なのだ。
 やがて交代の時間。二人は小さく、短く、急いで言葉を交わした。
「元気か?」
「元気だよ」
「俺もさ」
「よかった」
 二人の間ではこれで十分だった。二人はその晩朗らかな気持ちで眠ることができた。二人はそれから一言も口を開かなかった。
 やがてデブが遠くの国境の町に異動になって、そしてチビも異動になり、二人は離れ離れになった。
 そして数年が経った。
両国はついに戦争を始めた。鉄砲の音が毎朝響いた。夜空は戦火でいつも明るかった。空を見上げると、飛行機が鮮やかに輝く爆弾を空に植えていた。人々はそれらを美しいと最後に思って燃えていった。
 デブは故郷の村にいた。D国はデブの故郷からW国に進攻しようとしていた。しかし、先にW国の侵攻が始まった。攻撃は昼夜問わずに行われた。
やがてD国は撤退を始めた。デブの部隊はバラバラになり、彼は真っ暗な荒野を一人で逃げる羽目になった。
 地面が大きい音と一緒にグラグラ揺れた。地平線の向こうで白い光が弧を描いている。それらにデブは怯えた。
一軒の小屋が彼の前に現れた。デブはその中に逃げ込んだ。
「ああ、ここは」
 ドアを開くと壁一面にデブとチビの落書きがあった。一目で分かった。この絵は自分がチビを描いたもの。あの絵はチビが自分を描いたもの。
 そう、この小屋は二人の遊び場だった。奇跡的に当時のままだった。デブの目に、二人で遊んだ日々が、鮮明に流れた。
 その
(1089/2179文字)

⑬ゴミ屋敷

 ゴミ屋敷から追い出されたデブとチビは、市役所の地域課に勤めていた。このゴミ屋敷には何トンものゴミがあり、倒壊して道路を遮ったり、カラスも咳込むほどの悪臭を放ったりして、市内で一番の迷惑スポットになっていた。
「このゴミをどうにかしてくれないか」
 デブとチビは何度も居住者に言ったが、
「嫌でヤンス!ゴミではないでヤンス!転売すれば金になる財産でヤンス!オイラはこれでモテモテになったんでヤンス!」
 と、くっさいくっさい口臭を撒き散らされ、二人は追い出されていた。
「今日もダメだったね。頑固者め、近隣住民の迷惑も考えろ」
 デブはチビに言った。
「何がモテモテだよ。あんな口臭に近寄る女なんているのか?」
「でも、夜中によく出入りしている女はいるらしいぜ。それもたくさん」
「よくわからん。ああいう臭いがいいのか?」
 チビは首を傾げて言った。デブはひらめいた。
「燃やしてしまおう」
「いいね」
 その夜二人はニット帽と黒い服とサングラスを身に着け、ゴミ屋敷に火をつけた。
「助けてくれでヤンス!」
 居住者は崩れ落ちたゴミに挟まれて焼け死んだ。
「ハッピーエンドだ」
 チビは安心して
(472文字/944文字)

⑭地球ぽかぽか計画

 お金はないけど好奇心はたくさん持っている、天才小学生の丹羽スミレは、朝から冬の寒さに凍えていた。
「お母さん、寒いよ」
「こんなに寒いなんて」
 お母さんはエアコンと格闘していた。お金がない家庭だった。両親は一生懸命働いているのに、不景気でお金がなかった。
 窓の外には雪がうっすら積もっているが、スミレにとって、白い悪魔にしか見えなかった。
「ココア飲む」
「ああ、お母さんがヤカンに火をかけるから、あなたはやらないで」
 お母さんは水道の蛇口をひねったが、水が出ない。凍っているのだ。温度計を見るとマイナスを記していた。
流し台を覗き込むとスミレはビックリした。昨日水につけたお皿に薄い膜が張っている。触ってみると、冷たくて硬かった。氷ができるということは、冷凍庫の中のように寒くなっているということだ。
「なんとかしないと凍死しちゃうよ!」
 しかし、エアコンの調子が悪い。お母さんがずっと戦っている。修理を呼ぶお金もなかった。それに、ずっと暖房をつけるわけにもいかなかった。電気代がバカにならない。昨年の冬を思い出した。一日中ずっと暖房をつけていたら、電気代がすごいことになって、お父さんは寝込んでしまったし、おかずが減ってしまって悲しい思いをスミレはしていた。
 学校に行こうとすると、冬将軍の猛攻は凄まじく、靴の中がびしゃびしゃになった。
学校の勉強は大好きだったけど、手がかじかんでノートが取れない。休み時間になると、スミレは暖房の前に駆け寄って、ガチガチ歯を鳴らした。
「先生、学校の備品のエアコン貸して下さい」
「無理よ」
 先生はピシャリと言った。スミレはガッカリした。
「フン、お金のない家の子は可哀そう」
 ブルジョワ階級の娘である意地悪なエリカに笑われてスミレはムッとした。
「フン、俺なんて半ズボンでも大丈夫だもんね」
昨日まで粋がっていたジョーは風邪で休みだった。スミレはジョーが好きだったのでつまらなかった。
「全部寒さのせいなんだ」
 スミレは考えた。寒さを解消するにはどうしたらいいのだろう。彼女の明晰な頭脳は、革命的なアイディアを思いついた。
「そうだ、地球温暖化を進めればいいんだ!一年中温かくすればいいんだ」
 しかし社会は地球温暖化を防ぐのが主流だ。か弱い乙女が訴えても相手にしてくれないのはわかっていた。だから温暖化を促進させる機械を自分で作ろうとした。
 学校が終わるとスミレは、エリカが住んでいる高級住宅街に走った。その先は町のはずれになり、ブルジョワたちが捨てたゴミがたくさんあった。そこから機械を作るのに必要な部品を手に入れようとした。
広大なゴミの広場にはたくさんのホームレスが、まだ使えるものを探していた。スミレは争奪戦に参加したが、負けてしまった。
「私は負けないぞ」
 スミレの負けん気は強かった。数日経ってジョーが暖かな服装で登校した時に、
「ジョー!半ズボンで風邪をひくなんてカッコ悪いよ」
「うるさいやい。俺はカッコ悪くない。喧嘩だって負けたことがないんだ」
 女の子にカッコ悪い、と言われてジョーはムッとした。
「じゃあ、手伝ってよ。内容はね……」
 スミレはジョーに計画を話した。ジョーは汚名返上をしたくて計画に乗った。スミレがゴミの広場で部品を探している間、他の人々をジョー
(1329文字/2658文字)

⑮お金の木

 硬貨が三枚。それが天才小学生丹羽スミレの全財産だった。何回数えても三枚だった。
「お母さん、お小遣いちょうだい」
「悪いわね。お父さんの方があなたより少ないのよ」
 スミレはグズグズ泣いて、外に出た。どうしてうちは貧乏なんだろう。
町を歩いているとお寿司屋さんで、クラスのいじめっ子であるブルジョワ階級のエリカがまぐろを食べているのを見つけた。スミレは悔しくなったが、どうしようもできない。
 しばらく歩いていると、コンビニから同じクラスのジョーが追い出されているのに出くわした。スミレはジョーが好きだったので、駆け寄って尋ねた。
「悔しいなあ」
 ジョーは歯ぎしりした。コンビニのコピー機でお札を印刷しようとしたら見つかって怒られたのだという。
「ジョー、それは記録が残るからダメだよ」
「でも、おこずかいが少ないんだ。手伝いしても、全然足りないんだよ」
 それでもスミレの十倍持っていた。スミレはショックを受けた。その時に革命的なアイディアを思いついた。
「ジョー、そのお金を私に投資してよ。お金がなる木を作ろうよ。百倍にして返せるよ」
 ジョーはスミレのアイディアに飛びついた。二人は二週間、おやつも欲しいものも我慢して、品種改良に没頭した。そしてお金がなる木を作ることに成功した。
「木が成長すると硬い皮の実がなるんだ。その実の中には百枚の硬貨が入っているんだ。お札には製造番号が書いてあるけど、硬貨にはないからね。足がつくことはないんだよ」
「すごい!どういう仕組みなの!」
 ジョーに尋ねられたがスミレは、
「ジョーは慣性の法則って知ってる?」
「まだ習ってないよ」
「じゃあ説明しても無駄だね。よし、早速植えよう」
 スミレは自分が住んでいる団地の隅っこに植えた。木の成長は早かった。
十日でたくさんの硬貨の実がなった。実を割るとジャラジャラと、たくさんの硬貨
(760/1521文字)

⑯世界最速のコケコッコー

 天才小学生の丹羽スミレの家には車がなかった。いつも自転車で、お父さんもお母さんもスミレも移動していた。
「お父さん、どうして車を持っていないの」
 排気ガスが蔓延する道を、自転車で遠くの山にピクニックに行く途中、お父さんにスミレは尋ねた。
「すまんな。お金が貯まらないんだ」
「でも、みんな持っているよ」
 そう言うとお母さんが、
「車は環境に悪いのよ。たくさんの排気ガスで環境を汚し、二酸化炭素地球温暖化を招くんだから。地球温暖化をね。それに税金も高いし、ガソリン代も修理費もかかるのよ。だから自転車の方がいいの。お金もかからないし、いい運動になるじゃない」
 確かに母の言うとおりであるが、スミレは汗だくで疲れてしまったので、素直に受け入れられなかった。
 ちょうど悪いタイミングで、クラスのいじめっ子であるブルジョワのエリカに見つかった。エリカは大きな高級車に乗っていた。
「やーい。お金がない子は自転車でしか移動できないんだね」
 と、エリカの家の車は、若葉ともみじマークを楽しそうに煽りながら行ってしまった。
朝三時に家を出て、七時間かけて目的の山に。少し休んでご飯を食べてみんなで遊んで、また七時間かけて家に帰る。夜の十時に家に着くと、三人とも玄関で眠ってしまった。
「車があればいいのに」
 翌朝、筋肉痛でひどい目にあったスミレは学校で考えた。
 車を手に入れるのは簡単だった。壊れた車や捨てられた車を修理すればいい。しかし、そうなると、お母さんの言った環境破壊への不安、高額な税金と燃料代を支払わないといけなくなる。
 自転車にエンジンをつけることを考えた。試作車は成功して時速百キロで走ることができた。でもタイヤがすぐに破れてしまうし、漕ぐのがやっぱり大変だった。そして燃料もかかる。
 犬や馬に乗るのも考えた。軽車両扱いなので道路を走ることができる。でも餌代がかかるし、馬を購入する資金も高かった。
「もっと経済的な乗り物はないだろうか」
スミレの頭脳に革命的なひらめきが宿った。
「そうだ、ニワトリにソリを曳かせよう」
 ニワトリならば卵を産んでご飯にできるし、換金もできた。から揚げにして売りさばいてもいい。
 スミレは家に帰ると、冷蔵庫の卵を温めた。そしてヒヨコを孵化させた。しかしお母さんに見つかった。
「まあ、この団地は動物の飼育は禁止よ」
「しまった」
 スミレはダンボールに入れて、同じクラスのジョーの家に向かった。スミレはジョーが好きだった。
 ジョーの家は田舎にあったけれども、田畑があった。スミレは畑の隅っこで、ジョーの両親と祖父母の許可を得て飼育を始めた。孵化と交尾を繰り返し、たくさんのニワトリが育った。一見すると、ただの普通のニワトリの群れだった。ジョーは尋ねた。
「ニワトリがソリを曳くってどうやって、まっすぐ走れるの?そんなに早く走れるの?」
「私が遺伝子をいじくって完成させたこの餌なら、足腰の筋肉がとても強い、ニワトリが育つんだよ。私の指示がきちんと理解できるように、偏差値も高くなるんだ」
「すごい!どうやって作ったの?」
「ジョーは、分数を割り算する時、なんでひっくり返してかけ算にするのか、理由を知ってる?」
「まだ習ってないよ」
「じゃあ説明しても無駄だね。よし、そろそろ頭数が揃ったかな。一列に、並べ!」
 と、命令すると、ニワトリたちはピシリと一列に並んだ。そのあたりの大人よりずっとマトモだった。ザッザッと足並みを揃えて畑を一周する。どのニワトリも、同じように首を前後に動かし、瞬きも一緒にした。
「ワンワン!」
 近所の野良犬が、ニワトリの臭いを嗅ぎつけてやってきた。しかし、ニワトリは一箇所に集まって、羽を一斉にバタバタさせた。
「コケコッコー!」
 まっすぐ犬を見つめて同時に叫ぶ。その姿がとても不気味で犬は、
「キャイン!」
 と、泣き声のような鳴き声をあげて逃げていった。ジョーも、ニワトリが不気味で怖くて、泣き出してしまった。
「ジョー!男の子が泣くなんてカッコ悪いよ!」
 スミレはソリを準備して、ニワトリ一羽一羽をヒモで結び、犬ゾリならぬニワトリゾリを作った。スミレとジョーはソリに乗って、
「さあ、行くんだ」
 ニワトリは一度に走り出した。ザッザッとゆっくり走っていたのが、ドドドドドドドに変わり、二人は公道に出た。ジョーはスミレに尋ねた。
「ねえ、道路交通法は大丈夫なの」
「そこまで考えなくていいんだよ」
 ハイヤー!と、スミレは燃料の代わりにたくさんの特殊な餌を撒いた。これを食べるとニワトリは、元気一杯になって走り続けることができる。速度計で測ると、普通の車と同じ速度を記録していた。
 道行く誰もがビックリして、ニワトリの群れを指差した。交差点できちんと止まることもできるし、右左折も一糸乱れぬ行動できちんとできた。
「わあ、すげえや!」
 ジョーは大喜びだ。スミレは嬉しくなって、
「ジョー、こうしてニワトリで移動すれば環境破壊にはならないし、卵や鶏肉で食べ物にも困らない。困
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2020年5月文学フリマ中止と11月文学フリマ出店のお知らせ

 

①2020年5月文学フリマ東京のこと

bunfree.net

 

コロナで騒ぎが止まらない昨今、いかがお過ごしでしょうか。

何分いろいろ先が読めなくなってまいりまして不安定な日々かと思いますが、何卒ご自愛ください。

遅くなってごめんなさい。

出店予定でした2020年5月文学フリマ東京、開催中止になりました事ご連絡申しあげます。新刊無し&私は不参加ですが楽しみにしていたので残念ですが仕方がありません。

むしろ、運営他参加者様のここまでの御尽力ありがとうございます。

11月に会えること楽しみにしております。

 

②2020年11月文学フリマ東京のこと(ココ重要)

 さて――

 

11月の文学フリマ東京ですが、このたび革命的cinema同盟、

小説(エンタメ)コーナーにて出店致します。

二年ぶりですね。。。

ただいま

 

ただいま!!!!

 

帰ってこれてうれしいです。やっと帰ってこれた。。。

長かったなあ。。。

本当はマカロニウエスタン本を出してから帰って来たかったんですが、先に帰還することにしました。

エドウッド~ゾンビまでは第一期の活動と言いますか、今後は小説と情報誌交互に出していきたいと思います。

その際にはこのブログと、文学フリマのカタログ、Twitterで告知します。

 

じゃ、また11月に告知しますね。

 

伝説のエンタメ短編集No1!『こ・めでぃうむ20161123』内容紹介

伝説のエンタメ短編集No1!『こ・めでぃうむ20161123』

 

かき鳴らせ、ミステリのエクスタシー!

眠れ、娯楽の協奏曲!

新たなる世界共通言語、ここに爆誕

なにかいい物語があって、誰かと話すことができる。それだけで人生は素晴らしい(by海の上のピアニスト)

 

※1本書は文学フリーマーケット出店サークル「れうにおん」の機関誌「こめでぃうむ」(短・中編集)に掲載された中編小説です。

試し読みにつきましては「れうにおん」のブログをご参照ください。 http://reu2on.blog.fc2.com/blog-entry-3.html

 ※2下記紹介は書き手の主観に基づくものであり、事実に基づくかどうかは分かりません。読了後紹介文と皆様の感じ方が違うことがあると思いますが、ご了承ください。

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こめでぃうむ



文学フリマ販売価格:500円(Booth価格:600円)

ページ数:200p

発行者:こめでぃうむ

執筆:オー・ハリー・ツムラ 原案: 伊藤チコ(当時は安藤名義)他

andou-harumi.booth.pm

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※試し読み付

山田摩耶【繋がり】

【元祖!アオハルだ!小説】

全ては一本のシャープペンシルから始まった。園芸部員の『僕』は花壇に一本のシャーペンが刺さっていることに気が付いた。それは全て美人の同級生の陰謀だった!

『将来の夢は宇宙飛行士になることなんだ』

この夢が引き起こす、読者の大半が経験できなかった、糖分10Kgのアオハル!

 

あなたのアオハルはなんですか?

私?2chだけど?

 

波留吉久【はんぶんこ】

【今日の僕はどっちなんだろう。甦る『君の名は。』風味TSF!】

涙は本作のためにこの世に存在する。 その日の僕は「姉」として目が覚めた。時計を止める。麦茶を飲む。髪をとかす。制服を着る。朝食を食べる。何気ない、普通の日常。でも彼・彼女には一つの秘密が存在した。

p191「あとがき」に記された驚愕の事実に、あなたは驚愕する。(たまにあるよね、そんな時)

 

ふじさん【小泉花陽と、二人がここにる不思議】

【世界が待ち望んだラブライブ!ミステリー

稀代のラブライブ!ミステリの名手があなたに贈る最高のミステリー!アニメ第一期第四話「まきりんぱな」の舞台裏に隠された花陽の隠し事とは?倒叙ミステリーの形式を用いて明かされるアイドルたちの誇りの物語!

なお作者のページはこちら。

www.pixiv.net

 

春原竹人【デビルGLRL】

【ホラーの始まりは君と出会えた奇跡だった

借金の方に実の両親にたぶんエッチイお店に売られそうになった美少女JKイズミンは、たぶん自殺しようと踏切に立っていた。その時、悪魔が彼女の元に現れて…こう尋ねた。「あなた悪魔になりませんか」?

伝説のギタリスト ロバート・ジョンソンの神話『クロスロード伝説』に続く新たなる悪魔神話の誕生!!!!

お前も、悪魔にしてやろうか!?

 

蒼田ガイ【ミラージュ 超異能大戦X】

【モテない男が引き起こした第三次世界大戦

エッチイ・ホラーアクション展開は好きですか?嫌い?そうですか。

メイド喫茶に勤務する叶絵に恋する竜司がオォナァニィーをしていると射精と同時に町に封印されし大蛇が現れた!彼は叶絵がコッチ向いてくれない怒りのために自らの業にとらわれ、町に酸性のローションをぶちまける霧になってしまった!

そこに!

現れた!

和製アベンジャーズ!!異能者チームゥゥゥゥ!!

彼らは町を救えるか?正義!!!正義とは何か!!!!!答えは本書が知っている!!!!

全てのヒーローを目指す思春期の少年だった男たちに捧ぐ!

童貞よ!永久に眠れ!

 

ホレス・ウォルポール【王とその三人の娘】

【明かされない生まれなかったのにいる長女の謎

あ…ありのまま 今あらずじを話すぜ!「 ある国の王の娘は生まれなかったのにいる。そして死んだのに生きている王子様と結婚する」 な…何を言っているのか、わからねーと思うが 私も何を言っているのかわからなかった… 頭がどうにかなりそうだった…Z級だとかカルトだとかそんなチャチなもんじゃあ、断じてねえ もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ… 

あなたに与えられたチャンス…それはこの謎の前に崩れること…

 

 

ja.wikipedia.org

ホレス・ウォルポールはイギリスの小説家(1717年 - 1797年)です。ゴシック小説の開祖とされ、この系譜はのちのポーやガストン・ルルーオペラ座の怪人』に繋がります。

本作は同人誌でも珍しい翻訳小説になります。彼の作品は『オトラントの城』ぐらいしか手に入りにくく、かなり貴重な一作品。

なお、本書に掲載したホレスの短編集をまとめた『象形文字譚集』という短編集もあります。

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書いた方はこのアカウント。すでに品切れですが、時々再刊行される時もあるようなので、要チェック。
twitter.com

でも刊行されなかったら、もう本書と『最終章 こ・めでぃうむ』でしか読めないよー。

 

オー・ハリー・ツムラ【多分世界初!映画クイズ小説!タランティーノ絶賛して!

高校入学した安藤は映画部に入るも次々部員が退部してしまい一人になってしまった。大会が始まるのに部員不足。姉二人を口説き落とし大会出場するも前日に姉二人は喧嘩をしてしまい絶対絶命のピンチに陥る!

大会当日を迎え、迫りくる映画ヲタク共の奇問難問愚問ドラえもん数々の映画のアハト・アハト!!!

勝利のクワイ川マーチはどちらの頭上にかき鳴らされるのか!!!

そしてカルト映画クイズ70問の果てに、3人は絆を取り戻せるか!!!

どんなクイズかって?

例題喰らえ!!

例1 次の内『連れを起こさないでくれ。死ぬほど疲れている』など名言の多いアクション映画を選べ

①『ターミネーター

②『ロッキー』

③『コブラ

④『コマンド―』

例2 ジョニー・デップティム・バートンのコンビ作、公開順に並べよ。

①『シザーハンズ

②『エド・ウッド

③『スリィーピー・ホロウ』

④『チャーリーとチョコレート工場

例3 『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』の美点を200文字以内でまとめよ。

 

答えは君の心にある!!!

伝説のエンタメ短編集No2!『こ・めでぃうむ20170507』内容紹介

伝説のエンタメ短編集No2!『こ・めでぃうむ20170507』

 

新たなる伝説が始まった!

JKが!ババアが!幼馴染が!幼女が!黒人が!

圧倒的エンタテイメントに挑む伝説の短編集!

 

一つの謎に出会うこと、それは新しい人生の幕開けに過ぎない(by2ch)

※1本書は文学フリーマーケット出店サークル「れうにおん」の機関誌「こめでぃうむ」(短・中編集)に掲載された中編小説です。 試し読みにつきましては「れうにおん」のブログをご参照ください。 http://reu2on.blog.fc2.com/blog-entry-4.html

 ※2下記紹介は書き手の主観に基づくものであり、事実に基づくかどうかは分かりません。読了後紹介文と皆様の感じ方が違うことがあると思いますが、ご了承ください。

 

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※最終絶叫計画はJK VS地を這う殺人鬼に名前を変えました。
文学フリマ販売価格:500円(Booth価格:600円)

ページ数:124p

発行者:こめでぃうむ

執筆:オー・ハリー・ツムラ 原案: 伊藤チコ(当時は安藤名義)他

 

andou-harumi.booth.pm

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※試し読み付

春原竹人『蜃気楼ヴィレッジ』内容

【けして一人では読まないでください…】

悪魔と契約した女の業深き顛末…25年前幸福と富を手に入れる代わりに命を捧げる契約を結んだ。しかし欲深き女から醜い婆になった女性は契約した悪魔を殺し、すべてを手に入れようと考える。彼女は不思議な事件を専門に取り扱う探偵事務所「蜃気楼ヴィレッジ」に依頼し、悪魔を殺そうとするが・・・

 

本作は漫画です。魔人探偵脳噛ネウロに近い、奇妙な味の短編漫画です。なお、作者の他の作品は下記に掲載しております。

www.pixiv.net

二転三転する物語…慟哭のラストに私たちは涙する。

 

ホレス・ウォルポール『サイコロ箱』『桃入りブランデー』内容

【ホラー小説などの父ウォルポールの最高傑作!】

『サイコロ箱』

幼女ピシミンの大冒険!ピスタチオ・ナッツの馬車に乗り、像とテントウムシとで世界を巡る。彼女に恋するソロモン王、キレるシバの女王、冒険の果て、ピシミンの鼻に異変が…陸、海、空、駆け巡るゴシック小説の金字塔!

 

『桃入りブランデー』

5歳の女王の目隠し鬼から悲劇は始まった!喚く女王、キレる老王、ショックで流産した女王の母親…王国の王位継承権を巡る興亡が始まり、終止符を打ったのは大司教だった!ゴシック小説の元祖…日本上陸の瞬間に括目せよ!

 

ja.wikipedia.org

ホレス・ウォルポールはイギリスの小説家(1717年 - 1797年)です。ゴシック小説の開祖とされ、この系譜はのちのポーやガストン・ルルーオペラ座の怪人』に繋がります。

本作は同人誌でも珍しい翻訳小説になります。彼の作品は『オトラントの城』ぐらいしか手に入りにくく、かなり貴重な一作品。

なお、本書に掲載したホレスの短編集をまとめた『象形文字譚集』という短編集もあります。

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書いた方はこのアカウント。すでに品切れですが、時々再刊行される時もあるようなので、要チェック。
twitter.com

でも刊行されなかったら、もう本書と『ガールズ&シネマーズ』でしか読めないよー。

 

山田麻耶『憑依』内容

【幼馴染が俺の体の中に…】

恐怖!誰かが俺の中に入り込む!主人公相馬は幼馴染ヒロインの江地村(えちむら)が部屋に訪れたのと同時に6時間に記憶を失ってしまった。俺の身にいったい何が…真実が暴かれた時、世界が変わった!

ハートフル!

ワンダフル!

人肌寂しいすべての人々に捧げるハートフル小説の決定版!

令和青春小説、ここに始動!

 

根倉野蜜柑『天の露より遠く離れて』内容

『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』の興奮!黒澤明『生きる』の感動!】

南北戦争前夜に人種を、時代を、立場を、肌の色を越えた男たちのほとばしる熱き絆の物語!奴隷制なんてぶっ飛ばせ!

超大型綿花畑で過酷な重労働に血を吐く黒人奴隷イーザワは病気の仲間を救うために、命を懸けて脱走を試みた!ザワワ!ザワワ!ザワワ!広い南部の荒野を!ザワワ!ザワワ!ザワワ!黒い人が駆け抜ける!追いかける白人農主!立ちふさがる、血に飢えた黒人ハンター血まみれのメアリ!イーザワは運命を碁にかけた!

ミステリのプロットでヒューマニズムを描き上げた、『13階段』『天使のナイフ』に続く新たなる人間賛歌の物語!

今日、あなたは「人間」になる。

 

革命的cinema同盟『JK VS地を這う殺人鬼』内容

シリアルキラーがJKにボコボコにされる!空前絶後前代未聞の問題作!】

その夜、一人の少女が死んだ。 田舎町を舞台にホラー映画の文法に則って遂行される、ホラー映画のお約束殺人事件。 ただしこの世界では犯人も被害者も探偵役も、誰もがひとつずつ、なんらかの映画に基づいた「能力」を持っていたので、捜査は難航する。

JKたちはホラー映画のお約束から無事逃げ切ることはできるか?殺戮の果てに明かされる驚愕の真実とは…そして誰もが予想だにしなかったありがちなラスト!

 

内臓が!

人体が!

飛び散る!

これ一冊で殺人鬼に出会っても生き残れる、サバイバルホラーの決定版!!!

購入した人の生存率急上昇宣言!!!!ソース!私!

評論『進撃のヘンテコゾンビ 48 -死霊と虚無のオブ・ザ・デッド-』内容紹介

進撃のヘンテコゾンビ48

-死霊と虚無のオブ・ザ・デッド-

Z級映画専門情報誌 B to Z第3号)

↓ものすごく長いから、読み飛ばしたい人は思い切り下にスクロールして下さい。

諸君 私はゾンビが好きだ
諸君 私はゾンビが好きだ
諸君 私はゾンビが大好きだ

歩くゾンビが好きだ
走るゾンビが好きだ
喋るゾンビが好きだ
ブードゥーゾンビが好きだ
カニバリズムゾンビが好きだ
SFゾンビが好きだ
ゾンビ漫画が好きだ
ゾンビアニメが好きだ
ゾンビが好きだ

GEOで TSUTAYA
Amazonで DMMで
駿河屋で プライムで
午後ローで 漫画喫茶で
劇場で ブックオフ

この地上で創造される ありとあらゆるゾンビが大好きだ

雁首をならべたゾンビの群れが 咆哮と共に人類を吹き飛ばすのが好きだ
空中高く放り上げられた生首が ゾンビのツメでばらばらになった時など心がおどる

拳銃の構えた主人公の銃弾がゾンビの頭を撃破するのが好きだ
悲鳴を上げて燃えさかる燃え上がる屋敷から飛び出してきたモブキャラを
ゾンビが噛みついた時など胸がすくような気持ちだった

足並みをそろえた生存者の一団がゾンビの群れを蹂躙するのが好きだ
恐慌状態のリア充が既に息絶えたゾンビを何度も何度も発砲している様など感動すら覚える

レンタル主義の私をAmazonの一枚5,000円のDVDに自分で吊るし上げていく様などはもうたまらない
泣き叫ぶ財布が 私の降り下ろした『注文を確定する』ボタンとともに
金切り声を上げる『ご注文の確認』メールにばたばたと薙ぎ倒されるのも最高だ

哀れな視聴者が薄弱な覚悟で健気にも購入してきたのを
低予算のおぞましい演出がテレビごと木端微塵に粉砕した時など絶頂すら覚える

出来損ないのグズグズゾンビ映画に滅茶苦茶にされるのが好きだ。
必死に守るはずだった意識が蹂躙され、まぶたが閉じていく様はとてもとても悲しいものだ。

便乗映画の物量に押し潰されて殲滅されるのが好きだ
世間の『何が楽しいの?』という問いかけに追いまわされ
忘れた宿題の言い訳を考える子供の様に地べたを這い回るのは屈辱の極みだ

 

諸君 私は地獄を 地獄のゾンビ映画を望んでいる
諸君 本書を手に取るゾンビ映画愛好家諸君
君達は一体 何を望んでいる?

 

更なるグズグズゾンビ映画を望むか?
情け容赦のない 糞の様な脚本を望むか?
鉄風雷火の限りを尽くし三千世界の視聴者を殺す嵐の様なCG演出を望むか?

「ゾンビ! ゾンビ! ゾンビ!」

よろしい。ならばレンタルだ。

本書は満身の力をこめて今まさに振り絞らんとするゾンビの呻きだ
だがこの暗いGEOの隅で1時間もの間 探し続けてきた我々に ただのゾンビ映画では もはや足りない!!

ヘンテコな!! 一心不乱の変なゾンビ映画を!!

尺はわずかに1本90分。二時間に満たぬB級映画にすぎない
だがこれらは一騎当千のやべえ映画だと私は信仰している
ならばこれらを48本そろえれば総力相当あるだろう

それらを廃盤の彼方へと追いやり、 名作に現を抜かす彼らを叩き起こそう
嘘邦題で興味つかんで引きよせて、パッケージを開けさせ思い知らせよう
彼らに虚無の味を教えてやる
彼らにJVDの吹き替えを教えてやる

天と地のはざまには一般常識では思いもよらない作品があることを思い出させてやる

48本のヘンテコゾンビ映画で世界を燃やし尽くしてやる

ゾンビ映画愛好家より全人類へ」

第29回文学フリマ東京

HPを確認せよ

 

征くぞ 諸君

 (元ネタ:平野耕太ヘルシング』少佐より)

 

さて、前書き長くなりすぎましたが、今回もお邪魔させていただきます。

今回はみんな大好きゾンビの本なのです。

ヘンテコなゾンビ映画ばかりを集めました。

あなたの知っている作品も知らない作品もあるかもしれません。

 本書ではロメロも『カメラを止めるな!』も『アイ・アム・ア・ヒーロー』も論じません。私たちの口から出るのはいわゆる最下層のゾンビたちなのです。

 

今回予想外でしたが別冊映画秘宝 決定版ゾンビ究極読本 (洋泉社MOOK 別冊映画秘宝)とテーマも発売時期もほぼ丸かぶりで便乗みたいになってますが、私もびっくり。まあ仕方がない。こちらでは多分カバーしきれなかったあかん・やばいゾンビ映画を私たちでカバーできたかな?

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文学フリマ販売価格:1400円(Booth価格:1500円)

ページ数:P240

発行者:革命的 cinema同盟

編集:伊藤チコ、デルモンテ岡村

執筆:オー・ハリー・ツムラ、伊藤チコ、デルモンテ岡村

表紙・企画: 伊藤チコ

BGM選曲:オー・ハリー・ツムラ

印刷・ 製本:ちょ古っ都工房様

初版第1発行: 2019年 11 月 23 日

 

andou-harumi.booth.pm

 

第一部 ゾンビ映画を観てみよう

Chapter1 ゾンビ映画の歴史を歩いてみよう

ヴードゥー教ゾンビの『ベラ・ルゴシの恐怖城』からロメロゾンビを経由して『ワールド・ウォーZ』までのゾンビの歴史を歩いてみよう!

Chapter2 よい子のための楽しいゾンビ映画・漫画・アニメ

ゾンビ映画って内臓ドバァで気持ち悪い」「悪趣味なジャンル」「怖い」

そんな人も多いよね。でも大丈夫(^^♪

ここではかわいいゾンビ!カッコイイゾンビ!思わず泣けてしまうゾンビ!そんなゾンビ映画を私たちの歪み切って手遅れな視点からレビューしていくよ。

☆紹介作品

ゾンビランドサガ
ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド
③学園黙示録 HIGH SCHOOL OF THE DEAD
④ゾンビヘッズ 死にぞこないの青い春
ゾンビーズ
ウォーム・ボディーズ

ジョジョはゾンビ漫画だよ。そんな顔してもゾンビ漫画だよ。

いいね?

第二部 知ると楽しいマニアな世界!イタリア&キョンシー映画!

ここからはマニアな世界が始まるよ。出てくる作品も少し過激だから苦手な人は注意ね。

Chapter3 ルチオ・フルチとパチモンゾンビ軍団

名前を聞いたことある人も多いよね。『サンゲリア』、『サイゼリア』じゃないよ。おやじギャクじゃなくてマジでそう思っていた人(まあゾンビ映画興味ないなら仕方がないかも)いたから念のため。その監督ルチオ・フルチの崩壊し切ったグログロの、汚らしい場面が盛りだくさん、さらにロメロの『ゾンビ』に便乗したパチモンゾンビ軍団のレビューをしていくよ。

Chapter4 キョンシーがやってくる!

キョンシーはゾンビか?厳密にいえば違うけど、すごく広げた解釈の中でのゾンビ映画として、ここでは『霊幻道士』シリーズを紹介していくよ。

Chapter5 知るとさらに楽しい!マニアなゾンビ映画の世界

ゾンビ映画って正直無数にあるから、生涯で見ようと思っても全部は見切れないんだよね(その数は一説では1,500!)。ここでは有名なマニアな作品から掘り出し物のB級ゾンビ映画を紹介していくよ。いいね?

☆紹介作品

 

ゾンビ屋れい子
⑧ナイトメア・シティ
霊幻道士3 キョンシーの七不思議
⑩ゾンビシャーク感染鮫
ブレインデッド
⑫ゾンビ大陸 アフリカン
⑬夜明けのゾンビ
⑭ウォーキングゾンビランド
⑮サンズ・オブ・ザ・デッド
パキスタン・ゾンビ
⑰ゾンビコップ
⑱ゾンビマックス!怒りのデス・ゾンビ
⑲デッド・フライト

第三部 地獄と虚無のオブ・ザ・デッド

Chapter6 恐怖!悪魔の人体実験/『ゾンビ・オブ・ザ・デッド』シリーズ

うちの代表がJVD配給のデッチあげゾンビ映画シリーズ『ゾンビ・オブ・ザ・デッド』全六作を鑑賞し、身体と心の状況を克明に記録していくよ。よい子はマネしないでね。悪い子もマネしないでね。

※JVD 映画配給会社。エド・ウッドデビルマンより、ひどい映画を輸入し、変な吹き替えをつけていたところ。

Chapter7  食らえ!咽び泣け!地獄と虚無からの映画軍団!

割とマジで最後まで観るのがしんどい映画たちを紹介していくよ。あくまで私たちの腐敗してハエもやってこない感性でチョイスしたラインナップだから、あなたのお気に入りがあっても気にしないでね。まあ、ホントウにキツイ映画の何作かは、罵声まみれであまりにも見苦しくて、掲載できなかったよ…うん…

バイオハザード
㉑ZVZゾンビVSゾンビ
㉒おっぱいゾンビ
㉓ビッグフットVSゾンビ
㉔ZOMBEE ゾンビー 最強ゾンビ蜂襲来
㉕スペース・ゾンビ 吸血ビールス大襲来
㉖ジャーマン・ゾンビ
サンゲリア2
㉘デス・マングローヴ←本当はChapter5で紹介したかった。
㉙ゾンビ・ファイトクラブ
㉚ゾンビネーター
㉛ZVC ゾンビVSチアガール
㉜カンフー・ゾンビ
ゾンビアス
㉞死体と遊ぶな子供たち
アルマゲドン・オブ・ザ・デッド
バイオハザード3077
㊲レジェンド・オブ・ザ・リビング・デッド
㊳シティ・オブ・ザ・リビングデッド
㊴NINJA VS ZOMBIE
㊵ハウス・オブ・ザ・デッド
リンカーンVSゾンビ
㊷アストロ・ゾンビーズクローン人間の復讐
㊸レイプゾンビ
デッド寿司
㊺ロボ道士 エルム街のキョンシー
㊻レイダース 失われたゾンビの秘宝
㊼新ゾンビ
㊽プラン9・フロム・アウタースペース

 

今回の特徴
・知らない方が実り豊かな人生になれるゾンビ映画の地雷解体ショー
・だいたいのB級以下ゾンビ映画の概要がぼんやりとつかめるかも
今回の反省点
キョンシーがやって来る!がゾンビ映画大辞典の範疇から出きれてないのでリーチャーフィーのキョンシー映画ももう少し触れればよかった
・もう少しツムラに自由に書いて欲しかった。→彼の文章、好みが分かれるけど、私は嫌いじゃないので、もう少し脱線した話を書いて欲しかったなあ…初稿が面白かった分、自主規制で削られたのが悔しいです。

さて、ここまでとあらすじとかブログ、文フリのカタログ読んでみて、「うわ、やばそう。関わらないでおこう」な方は気になったタイトルだけレンタルして見てとりあえずご自宅で阿鼻叫喚の地獄絵図を体感して貰いたいのと、ゾンビ屋れい子ゾンビランドサガ含めた6作は見ていて損はないよ
嘘じゃないよ
「うわ、やばそう。とりあえず買ってみよ」な方は、彼氏彼女に見つからないようにコッソリ読みましょう。旦那嫁お子様に見つかった時の言い訳も考えときましょう。私からの提案としては「拾った」「知り合いの同人誌」「会社で買えと言われた」。多分許してくれるよ。
なにはともあれ理由はなんであれ、間違いなくこれらのゾンビ映画はあなたが楽しめる物語の幅を広げてくれるのに違いはないよ。嘘じゃないよ、本気だよ。広がらなかった時の責任?そんな方はラーメンの画像、深夜にプレゼントだよ、イイね?
ラッジャーな人は我々と一緒に地獄に付き合ってもらうよ
ノウ、サンキューな方は、その気になるまで、もしくは道を踏み外すまで待っているよ。
イイね?
神に祈れ。
覚悟しろ。
ようこそ、ゴミまみれの世界に。
(このツイはあとでブログに転載するよ。今パソコン使えなくてね)